遠足気分で
目を覚ましたお姉さんは、どこか呆然としていた。
「お姉さん?大丈夫ですか?」
まだ寝ぼけているのかと思って譲が言えば、お姉さんがゆっくりと首をふった。
「ああ、うん。大丈夫。…私、眠ってた?」
「はい。ぐっすりと。」
眠ってるようにはみえなかったが、とのぞむがぼそりと呟く。
「ええっと、臣君にもたれて?」
眼鏡を直しながらお姉さんが言う。
「ああ。俺は高いぞ。」
からかうように言う臣に、お姉さんはまだぼうっとしたまま、うん。と答えた。
三人が首をかしげていたが、お姉さんが通過した駅を見て言う。
「もう少しで目的地だから。そろそろ降りる準備してね。」
「あ、はい。」
お姉さんは隣のコンパートメントを覗き込んで、同じことをいった。
「まいった…。」
お姉さんの呟きが聞こえた譲子は不思議そうに彼女を見ていた。
ニュルンベルグに付くと、駅の中でお姉さんが言う。
「さて、これからどういこうか。」
「どうって?」
「したからゆっくり見て上までいくか、上まで一気に上ってゆっくり降りてくるか。」
「見ながらゆっくり行けばいいんじゃね?」
「じゃ、それで。」
ちょっと待っててねといって、お姉さんが駅のパン屋に入って行く。
「じゃ、行きましょうか。」
にこりと笑って戻ってきたときには、手提げかばんが一つ。
「?パンやさんでそんなかばんを貰ったんですか?」
譲が首を傾げれば、お姉さんがからからと笑った。
「違う違う。これは自前のショッピングバック。
ドイツはゴミ軽減のために、袋をくれないところが多いのよ。
だから、これくらいの折りたためる手提げをもってると便利よ。」
歩きながらお姉さんが言う。
ひとまず駅を出てまっすぐに歩いていく。
「このまま道沿い上がっていけば、ここの名所、カイザーブルグに出るから。道なりに、教会もあるし。」
いいながらゆっくりと坂を上る。
「そういや、さっき何買ったんだ?」
臣が不思議そうに言えば、差し出されたのはベーグルサンド。
「食べる?」
「食う!」
いそいそと受け取って食べ始める臣に、お姉さんは笑い、譲が呆れる。
「兄さん、もうおなかすいたのか?」
「もうって、もう11時だぞ。」
「あっはっは。そう言うだろうと思って食料と水買ってきたわよ。何しろ、どの店が開いてるのか予測不可能だからね。」
ゆずちゃんたちはどう?と差し出されたのはプレッツェル。
譲は譲子と顔を見合わせ、二人仲良くそれを分けた。
「ほい、あんたたちも。」
そういいながらいろいろとのぞむたちの手においていく。
「飲み物どうする?一応コーヒー飲料もあるけど。」
冷えてるけどねーといいながら渡す。
「あ、ゴミはコッチにちょうだい。燃えるごみはこっち、燃えないのはこっち。」
お姉さんが二つのビニール袋を差し出さす。
「それも持ってきたんですか?」
袋はもらえないと聞いていたのに。とのぞみが不思議そうにした。
「まぁね。遠足のゴミ袋は基本でしょ?」
「遠足…まぁ、そうだけどよ。」
将が呆れながらも感心した。
「くせかな。兄弟がけっこうこういうこときちんとしていたから。」
「へぇ。」
食べ終わったところにウェットティッシュをさしだされ、細やかな気遣いに臣が少し驚いたように言う。
こういうところは、きちんとした大人なんだなと、男たちは思った。
あの悪戯さえなければ。
小さくため息をついて、臣がお姉さんの手提げを持った。
全員に一通り配ったはずなのに、まだ結構な重みがある。
「臣くん?まだ足りない?」
「ちがうって。重いんだろ。これくらいは俺が持つよ。」
どうせ、俺が食うんだし。
「って、食べる気満々ね。」
「おう。」
にっと笑えば、ありがとうと穏やかな笑みが返ってきた。
珍しく素直な柔らかな笑顔に、周りも同じように微笑んだ。
written by sou
文 総
2007.02.10日記 遠足気分で 加筆修正