個人旅行の楽しみ方?
駅から程近い、ゲルマン民族・国立博物館。
入り口近くのカウンターでそれぞれチケットを買う。
学生料金きっちり払ったのに、返ってきたおつりに、譲子は不思議に思って受付の人を見る。
すると、受付の人はにこやかな笑顔でCHILD料金を指差した。
「………さ、さんきゅー」
引き攣った笑顔で譲子がカウンターを離れる。
後ろでは将と臣、それにのぞむが爆笑していた。
「兄さんたちっ!!」
譲子が怒るが、聞くわけが無く。
「譲子ちゃん、ちっちゃくて可愛いから。」
のぞみも笑っていう。
「…譲だって、似たようなものなのに!」
「雰囲気の問題だろ。ゆずちゃんは、綺麗だからv」
ちゅ、とのぞむにキスされて、譲がまた赤くなる。
のぞむの言葉にずーんと落ち込む譲子を見て、お姉さんがぽんぽんと頭をなでた。
「いーじゃない。彼氏はそのちっちゃくてかわいい譲子ちゃんがすきなんだから。」
ね、とお姉さんに顔を見られて、のぞみがたじろぐ。
譲子までもじぃっと見てくるので、のぞみはこくりと頷いた。
とたんに広がる鮮やかな笑み。
それに眼を奪われたのぞみが、ほんのりと赤くなる。
「おいおい、二人して通じ合ってないで、行くぞ。」
将が呆れたような口調で言えば、一段と赤くなる二人。
くすくすと笑いながらお姉さんが将に言った。
「お兄ちゃんは、大変ね。」
「…まぁ、な。」
どこまでわかって言っているのか。
お姉さんの意味深な笑みに、将が苦い顔をした。
「じゃ、一応博物館内は自由行動で。5時半にここに戻ること。
5時半の時点で、ここにいない場合は、その場で待機。
私が探しにいくからね。下手に歩き回るとすれ違うから、5時半になったら、場所を移動しないこと。」
OK?といわれて頷く6人。
時計の時間が合っていることを確認して、余計な荷物はロッカーに入れ、歩き始める。
とはいっても最初のうちは皆一緒。興味を持ったものが出てきたら、じっくりみるという感じだった。
陶磁器などの小物・大物や、中世の衣装。出土された剣や土器。宗教画や彫刻が多いのも、ヨーロッパならではだろう。
教会などの建物の壁につけられている彫刻が目の前で見ることができたのも、なかなかと楽しかった。
「この衣装を見ると、当時の人たちってそれほど背が高くなかったのかな。」
「みたいだな。お前とそう変わらないんじゃないか?」
譲子がドレスを見て言えば、将が茶化すように言う。
「何だか、凝縮された歴史といった感じがしますね。」
「そうねぇ。この骨なんて、まさか死んだ後、何百年もたってからさらし者になるとは思わなかったでしょうね。」
「安らかに眠ってるといいんですが。」
出土品のところに展示された、本物かどうか分からない箱入りの土に埋まった骨をみて、お姉さんや譲達が言う。
「うーん。このキリスト像とか、マリア像はけっこうグロいんじゃないかな…さすが狩猟民族。」
「…内臓がきっちり出てんな。」
日本語があまり伝わらないのをいいことに、言いたい放題に言って歩くご一行。
時々離れたり、再び出会ったりしながら一通り見て回る。
一回りして戻ったときにはほぼ5時半。
「ん、ぴったりv よしよし、はぐれた子もいないわね。」
全員居るのを確認して、荷物を取ると駅へと戻った。
再び電車で2時間の旅。
フランクフルト中央駅に着いたときには、流石に疲れが少し出ていた。
「ふうむ。遅くなったし、今日はホテルの部屋で、皆で食べるか。」
「え?」
こっちこっちと連れて行かれたのは、昨日ソーセージをかったファーストフードが並ぶ一角。
「ほい、好きなものを、好きなだけ買っておいで!」
「ええ!?」
「ホテルで食べよ。こういうのも、たまにはいいでしょ。」
お姉さんがウィンクする。
譲たちは顔を見合わせた後小さく笑って、はいと返事をした。
ホテルに戻ると、角部屋で一番広い譲たちの部屋へ入る。
一番片付いているだろう、というのもあるが。
テーブルを動かして食べやすいようにする。
「ほい、今夜のメイン。鳥の丸焼き。」
「って、どうやって食うんだよ。」
呆れたような臣の声に、お姉さんが取り出したのはペティナイフとフォーク。
ついでに差し出された袋入りの割り箸数本
「…なんで、そんなもの持っているんだ?」
「包丁(ナイフ)とフォーク、スプーンに箸は旅の必須でしょ。」
言いながら、器用に鳥を解体していく。
どんな旅だとつっこめば、こんな旅だと返事をして、お姉さんが食事を指差した。
テーブルの上に広げられた肉、フィッシュチップ、ポテト、サラダにサンドイッチやキッシュ。
パン数種類にケーキにスターバックスで買ったコーヒー。
そしてワイン。
大瓶2本と小瓶を1本、ぽんぽんと栓抜きするお姉さん。
「…いつの間に…」
「君達に会う前にね。おいしいお店で買っておいたのよ。
渋めの赤。すっきり白。ちっちゃいやつが、あま〜いアイスワイン。」
譲ちゃんと譲子ちゃんみたいね、とアイスワインを指差すお姉さん。
ぽわんと赤くなる譲と譲子。
「片方は、渋みが強いと思うが。」
将が突っ込み譲子の拳骨が飛ぶ。
「あら、その渋みがまた美味しいんでしょv」
くすりと笑ってお姉さんが言えば、そうですね、とさらりと答えるのぞみ。
その言葉に思わず固まる譲子と将。
そんな様子を見ながら、グラスやコップを並べて、好きなのをのみなさいとお姉さん。
「これは炭酸水。お酒を割ってのんでもいいよ。こっちは普通の水だから。」
二つあったテーブルを寄せてもはみ出してしまう量。
ベッドや床に座って、それぞれ好きに食べ、飲んで笑う。
「…確かにな。」
「ん?どした?」
臣の呟きに、お姉さんがワイングラス片手にご機嫌に聞き返す。
「こういうのは、個人旅行の醍醐味なんだろうな、と思ってな。」
「確かにね。ツアーじゃ、こうはいかないよ。」
くすくすと笑って、お姉さんが臣にグラスを掲げる。
こつんと音を立ててグラスを合わせ、二人はにこやかにお酒を飲み干した。
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文 総
2007.02.20日記 個人旅行の楽しみ方? 加筆修正