謎のお姉さん



 真横に突き刺さったボールペンを見て思わず青くなる。
 気配がしてとっさによけたものの、いったいどこから飛んできた?

 譲ちゃんが覗き込んでいたから、目の前の人物の全身が視界に入っていたわけではない。
 けれど、体が動いたようには見えなかった。
 今と変わらず寝息を立てている。

 動体視力は良いほうだ。
 まして、武術で培った気配を読む力は、伊達でもなければ、ハンパじゃない。
 それなのに、動きが見えないばかりか、動いた気配も分からなかった!

 なんなんだよ、こいつ。

 そういや、臣を蹴り飛ばしたことがあったな。
 てっきり女相手だからわざとけられたのかと思ったんだが…
 もしかして、アレはマジでやられてたのか?
 だとしたら…


 とんでもねぇ!


 臣は俺とやりあえるくらいだ。
 少しくらいできる女じゃ、相手にもならないってのに。

 こいつ、本当に女かよ…。


 カッ!!


 微かな殺気のようなものとともに、再び飛んできたボールペン。
 …こんどは黒か。さっきは青だった

 またもや見ることも、感じ取ることも出来なかった動きに、ふぅとため息をつく。
 髪にささったボールペンを抜いて、譲ちゃんに声をかけた。

「…ごめん、譲ちゃん。髪を直してもらえるかい?」
「あ、はい。どうしたんですか?こんなに乱れて。」
「…ちょっと、ね。」

 彼女にも見えてなかったってことだよな。


 座席に出来た穴をみて、再び固まった。
 二回飛んできたのだから、二つなければならないはずのそれは、ぴったりと一つに重なっていた。

 …おい、二回とも同じ位置に投げたのかよ!

 譲ちゃんが心配そうに声を掛けてくるまで、俺は動くことができなかった。

 ほんとに、いったいなんなんだ?





written by sou



イラスト sava 文 総 
2007.02.12日記 目が点のぞむ 謎のお姉さん 加筆修正