眠り王子の起こし方



ぱたん、とドアを開けてお姉さんがのぞみの寝ている部屋へと入った。
ベッドの横を見れば、そこにはのぞむに蹴落とされたままの格好で
毛布にくるまってすやすやと眠るのぞみがいた。

とりあえずのぞみの身体をゆさゆさと揺すってみるが、もぞ、と寝返りをして

「うう、ん…譲子ちゃんが、キスしてくれたら…起きる…」

と呟いただけで、また夢の国へと戻ってしまったようだ。

「いやん。かわいいっ。でも、ええと?たしかこの子も古式武道の達人なのよね。と、いうことは…」

すっ、と息を整える。
そして…

だんっ!!

「…!!」

先程までのぞみの頭があった場所にお姉さんの踵がめり込んだ。

「お見事。若いから反射神経がいいわね〜♪」
「…」

間一髪でお姉さんの攻撃を避けたのぞみが枕を抱えたまま、ぱちぱちと目をしばたたかせて
お姉さんの顔を見上げる。まだ何が起こったのか把握できていないようだ。

「お・は・よ〜。目が覚めたみたいね、お寝坊さん。皆待っているわよ。早く支度してね」

ばちんとウィンクをしながら、お姉さんが毛布から足をどかすのをのぞみは呆然と見ていた。
というか毛布に開けられた見事な穴に目が釘付けになっていた。

「…お、おはよう…ございます…。今、何をしました…?」
「ん?何って、君を起こそうとしたんだけど?」
「物凄い殺気を感じたような気がしたんです…が」
「うふん?君、寝起き悪いって聞いてたから、ちょっとしたお茶目よ♪」

お茶目で毛布に穴が空くだろうか。
これが頭に直撃していたら間違いなく今日が命日だ。
死亡理由は寝起きの悪さ?冗談じゃない。

「もし明日も起きれないようなら、お姉さんが起こしに来て上げるからね。遠慮しないでね」
「…是非遠慮します」

だんっ!

「せ、誠心誠意、早起きする事を努力します!!」
「よろしい」

のぞみの抱えた枕にはお姉さんの空けた穴が空いていた。

「さて、のぞみ君」
「は、はいっ!?」

てきぱきと出来るだけ速やかに支度を終えたのぞみにお姉さんが声をかけた。
のぞみが慌てて振り向くと、

ちゅ

「Guten Moegen♪」
「…!」

のぞみの頬にお姉さんがキスをした。

「え、ええ、えええええっと」
「君、寝言で、キスしたら起きるって言ってたから」
「あ、あれは、その」
「譲子ちゃん限定?」

真っ赤になったのぞみを見てお姉さんは楽しそうに笑う。
そして止めの一言を言う。

「キスしたことは譲子ちゃんには内緒にしておいてあげるわね♪」

こ、この人は〜〜〜!!

「…な〜んて、ね。嘘よ。さっき譲子ちゃんにもおはようのキスをしたから、今日は間接キスで我慢してちょうだいね。
明日はちゃんとお姫様をよこしてあげるから。い〜い、キスでちゃんと起きるのよ。分かった?眠り王子さま」

何と答えたらいいか分からないのぞみを楽しそうに眺めてからお姉さんは「さ、行くわよ」とのぞみを促した。

うふふ〜と踊るように部屋を出てゆく後姿にも、悔しい事に全く隙がないのだった





written by sava





 挨拶は平等に



「そういや、いったいどうやってあののぞみを起こしたんだ?」
 朝食の席で将が不思議そうに聞く。
「ん?いわゆるあめと鞭ってやつ。」
「あ?」
「ふふふvかわいいわよね〜キスしたら起きる〜なんてv」
「あぁ!?」

 したのかよ、と目を丸くする将。

「残念ながら譲子ちゃん限定らしいけど?」
 ウインクをして言うお姉さんに、将が呆れた視線を送る
「おや、君も欲しかった?」
「…君もって…」

 やっぱりしたのか?してないのか?

 隣のテーブルでコーヒーを貰っているのぞみを見ながら、将は一人頭を悩ませた。
 それを見て、お姉さんがくすくすと笑う。

「心配しなくても、譲子ちゃんが悲しむようなことはしてないわよ。」
 にこりと笑って席を立つお姉さんに、将がそうか、と頷いた。

 油断大敵。

 ちゅ

「なっ!?」
「Guten Moegen 挨拶は平等にしなきゃね〜♪」
 お姉さんが笑いながらデザートを取りに行く。
「……って、やったのかよ!?」
 再びどちらなのか分からなくなり、将が混乱する。


「ふふ、後二人♪」
「何がですか?」
 同じくデザートを取りに来ていた譲が不思議そうにお姉さんを見る。」
「ん?挨拶はきちんとしなきゃね、と思ってv」
「ああ、そうですね。」
 にこりと笑う譲が先に席に戻るのを見ながら、お姉さんはくすりと笑った。
「さてさて、どうやって不意を付くかな。」

 お姉さん、全員制覇まであと少し。





written by sou



イラスト sava  文 sava&総 
2007.02.13-14日記 眠り王子の起こし方 挨拶は平等に 加筆修正