女子高生のお買い物
観光最終日。7時に食事を取り、8時前にはホテルを出る。
地下鉄で2駅移動して、地上にでると、目の前には壮麗な教会が現れた。
「大聖堂よ。皇帝の戴冠式が行われていたとか。中に博物館があるから、時間があったら行ってみようか。」
お姉さんはそういって、道を曲がるとすたすたと歩いていく。
道沿いにいくつもの店が隣接しているのを見ながら進んで行くと、お姉さんが一角を指差した
「もうそろそろ…あ、あった。」
目の前に自動ドアがあるけれど、外から見ても何のお店か分からない。
「ほら、早くいらっしゃい。」
こいこいと手招かれて疑問に思いつつ中に入れば、まず目に付いたのは花屋。それから肉屋。
「ここは…?」
「屋内市場よ。肉屋や魚屋、八百屋にパン屋もだけど、ジャムやハーブ、スパイス、ああドライフルーツのお店もあったわね。楽しいわよv」
その言葉に、いや、入った瞬間瞳を輝かせているのは、もちろん二人の主婦…もとい料理好きな少女たち。
出店のような一角で、譲子たちの足が止まる。
「うわぁ。このお店、ドライハーブがすごい。これはパスタ用?こっちは煮込み用かな?」
「これ…塩!?ええ?真っ黒なお塩なんてあるの!?」
「ナッツもある。これは…きのこ?あ、これパエリアミックス!?お米とハーブのセットだ!」
様々な乾物が、小さなビニールに包まれて山積みされている。
きゃぁきゃぁと品物を選んでいたら、商品の台を挟んで内側に居るお店の人が、笑いながら籐の籠を差し出した。
どうやら買い物籠の代わりらしい。
手からあふれ始めた品物に苦笑して、譲子と譲は籠を受け取った。
「可愛いわねぇ。」
「まぁな。」
「普通女子高生っていったら、免税店のブランド品を喜びそうなものなんだけどね。
あとはまぁ服とかアクセサリーとか化粧品。」
くすくすとお姉さんが笑う。
「だから、あんたにガイドを頼んだんじゃねぇの?」
将も笑って言う。
「ま、感謝してるよ。」
「おや。」
「普通のツアーじゃ、あいつらのあんな顔は見られないだろうからな。」
眼を細めて譲子を見る将に、お姉さんが小さく笑った。
「将くん、それじゃ、まるっきり保護者だよ?」
「俺はあいつの『兄』だぜ?」
そう返せば、お姉さんがあははと楽しそうに笑う。
『高校生が!なんてことを言わず、ニコニコと受け流して…楽しんでくれそうですよ。』
譲子の言葉を思い出し、将が苦笑する。
ああ、確かに、こいつは笑ってばかりいるな。
気まずい場面もけろりとかわし
生意気な言葉もさらりとかわし
人で遊んでいじくって
後をひかずに、引きずらせずに
にこにこ、けらけら、笑ってる。
何より一番楽しんでそうで、こっちも遠慮なく要望が言える。
『…母さんにやられたのか、あいつにやられたのか…』
さぁな。どっちにしろ、『やられた』ことには変わりないな。
くくっと将が笑えば、思い出し笑いはスケベなんだぞ☆とお姉さんが指をさして、また笑った。
written by sou
嬉しそうな2人
まるでスターを見つめるファンのよう。
でも視線の先にあるのは、塩。
「譲子ちゃん…目の色が違う…」
「あ、あ〜〜あれはもう止められねえな…」
「よかったなのぞみ。思う存分荷物持ち出来るぜ」
「ま、仕方ねえな。楽しそうだからしょうがねえ、か」
後ろのパパ達は苦笑しつつも見守っていた。
written by sava
旅の風物
「ほい、君達にはこれ。」
「ん?なんだこりゃ。」
手渡されたのは干し柿に似たもの。
「食べてごらん。」
言われるままに口にすれば、ゼリービーンズのような食感。
「…なんだ?」
「あはは。トマトよ。干しトマトの砂糖漬けってとこかしら?」
珍しいでしょ、とお姉さんが笑う。
「日本茶や中国茶にすごく合うのよ。」
「へぇ…って、なんか食ってばっかいるよな、この旅行。」
「旅は5感で。見て、聞いて、食べて、香りをかいで、触れて。一応全部クリアしてるでしょ?」
「食べ物限定ならな。」
臣のつっこみにお姉さんが澄まして言った。
「あら。食は重要な文化よ。」
そう言って笑っていると、譲と譲子が戻ってきた。
「どう?いいもの買えた?」
「はい!すごいですね、ここ。」
「ドイツはオーガニックの発祥の地でもあるからね。
それに、日本の風土じゃハーブはどうしても育たないというかドライにしにくいのよ。
たくさん買った?」
「「はい」」
にこにこと笑う二人に、お姉さんが頭を撫でる。
「はい、譲ちゃんたちにはこれ。」
「?」
「干しイチゴの砂糖漬け。美味しいわよ。」
「ありがとうございます。」
「これもここで売ってるんですか?」
「うん、そう。他にもマンゴーとか、栗とかメロンとか。いろいろあったわね。」
言いながら連れ立って歩く。
「あ、ここここ。」
ジャムなどのビンが並ぶ一角で、お姉さんが足を止めた。
「ここのバジリコペーストがおいしいのv」
ジャムのビンの山を指を刺して説明していると、お店の人が出てきて、パンにつけたペーストを試食させてくれた。
「あ。」
「おいしい。」
「今買うと、パンがオマケでついてくるそうよ。」
お姉さんに勧められて二人とも一ビンずつ買った。
お金を払うと、お店の人に近くのパン売り場へ連れて行かれた。
出てきたのは、顔くらいの大きさの、硬めのパン。
「え?」
てっきりロールパンくらいかと思っていたら、このサイズ。
「…ど、どうしよう。」
「もって帰れるの?」
二人が悩んでいると、将と臣がパンを見て言う。
「食っちまえばいいじゃねぇか。」
「昼にでも、ホテルに戻るか?」
「あ、それもいいわねぇ。」
お姉さんが同意して、お昼に食べることになった。
written by sou
イラスト sava 文 sava&総
2007.02.28-03.03日記 女子高生のお買い物 嬉しそうな2人 旅の風物 加筆修正