旅の終わりは祭りの終わり
いったんホテルに戻り、昼食をとる。
帰りがけに引っ掛けたいくつかの食料に、市場でおまけされたパン。
それにスーパーで買ったパテをぬりながら、はぐはぐと食べる。
おなかを満たし、スーツケースに荷物をつめて。
部屋の中を一通り確認して、ホテルをチェックアウトした。
フランクフルト中央駅から空港まで、なんとなく物静かになって外を見つめる。
空港につくと、航空会社のカウンターでチェックインを済ませ、スーツケースを預けたら、少しばかり張っていた気が抜けたらしく、それぞれに、ほっと息が漏れた。。
「なんだかあっという間でした。」
「四日間だからね。帰るのにもう一日かかるけど。」
出国審査に移動しながら、お姉さんも少し気が抜けたように言った。
再び簡単な審査を受けて、税関を抜ければ、免税店が立ち並ぶ。
「って、何であんたまで!?」
にこにこと付いてくるお姉さんに、のぞむが眼を丸くする。
「やぁねぇ。私がスーツケース預けるの、見てなかったの?」
「…見ていたが…」
憮然とするのぞむに、お姉さんがけらけらと笑う。
「あはは。心配しなくても私が行くのはウィーンだよ。」
「あ、そうなんだ。」
あからさまにほっとするのぞみに、お姉さんがきらりと眼を光らせた。
「ふぅん。そういえば、まだ貸しを取り立ててなかったわよねぇ。」
「そ、それは…」
「そうねぇ。」
んーと口元に手をあてて考えていたお姉さんが、にこやかに言った。
「手と口と耳、どれがいい?」
「え?」
「どれ?」
にこやかだが、有無を言わせない笑顔。
加わる圧力に、つい言ったのは一番問題がなさそうなもの。
「手…?」
ちっと舌打ちしたのが聞こえたあたり、のぞみは選択が正しかったと知る。
「何です…?いったい。」
「ふう。しょうがない。」
お姉さんが手を差し出すと、のぞみが素直に手を握った。
「甘いなぁ…」
ぼそりとお姉さんが呟いて、次の瞬間、のぞみはぐいっと体を引っ張られた。
「Alles Gute
!」
お姉さんにぎゅぅっと抱きつかれて、のぞみが慌てる。
もがくけれど、がっちりと間接を決められていて、抜け出せないのだ。
くすくすと笑いながら抱きついていたお姉さんが、ようやく離れてくれたときには、のぞみは息切れをしていた。
「本当はのぞみくんから、譲子ちゃんにしてもらおうと思ったんだけどね〜。
それじゃぁちっとも進まない気がして♪」
にこりと言い切られて、反論できずにのぞみがうなだれる。
「ま、そういうわけだから。」
ひらひらと手を振るお姉さんを見て、ここでお別れなのだと思ったら、譲は胸の奥がツンと来た。
「お姉さん…」
「譲ちゃんも譲子ちゃんも元気でねv 写真はいろいろ☆楽しいの送るから♪」
「…そのいろいろってのが引っかかるが。」
「男が細かいことを気にしない!」
「あんたの場合、気にしたほうがよさそうだ。」
将と臣に突っ込まれて、お姉さんがあははと笑った。
「ところで、さっきの、口と耳だと、どうなるんだ?」
ふと思い出したように、のぞむが言うと、お姉さんはにやりと笑って答えた。
「口はキッスv耳は愛の囁き♪」
手がハグなのよ。と続けるお姉さんに、のぞみは手にしてよかった〜と心から思った。
「おっと、それじゃぁ私は行くわね。」
時計を見て、お姉さんが動いた。
元気でねvと全員の頭を撫でて、歩いて行く。
軽い足取りで搭乗口へ向かう背中を見ながら、それぞれ思い思いにため息をついた。
「なんていうか…」
「騒がしかったな。」
「ほっとしたような。」
「気が抜けたっていか。」
「祭りの後みたい。」
「あ、そんな感じ…って、あれ?」
「どうした?譲。」
譲子が不思議そうに譲を見る。
「うん。結局名前を聞けなかったと思って。」
「…あ〜〜」
「謎が残ったな…」
疲れたように言い合うが、決して不快なものではない。
もう一度会いたいかといわれたら、微妙な気分になりはするが。
それでも、祭りは楽しいものだったから。
あとは帰って、日常をはじめるだけ。
いつもの様に騒がしく。
written by sou
文 総
2007.03.06日記 旅の終わりは祭りの終わり 加筆修正