アルカイックスマイル
「きゃー、このポスター綺麗!」
「あ、これ今よく見るよね〜」
文化祭の宣伝ポスターを貼りに行くとあちこちからこのような声を聞く。
たしかによく目立つ配色だし、急いで作ったわりに出来栄えも上々。どの店にお願いに行っても快く引き受けてくれる。
それはは生徒会役員として、又文化祭の執行部としても喜ばしいこと以外の何者でもない・・・はずなのだが。
「へぇ〜今年は合同文化祭なんだね。いいよ〜こんな美人さんのポスターならいくらでも貼っていって」
「・・・ありがとうございます」
ぺこりと店主に頭を下げて、譲子は表通りに面した壁にポスターを貼らせてもらった。
(ああ・・・こんな目立つ所に貼ったら先輩嫌がるだろうな)
ポスターの美女モデルは実は女性ではなく男性で、譲子の長年の片思いの相手なのだ。
(・・・うう、先輩ごめんなさい)
心の中でのぞみに謝りながら譲子はぺたりとポスターを貼った。
「ねえ、そのポスターくれない?」
背後から譲子に声がかかった。振り向くとそこには同じ年頃らしい女の子の2人連れがいた。
「え、でもこれは枚数に限りがあるので・・・」
「一枚くらいいいじゃん。貼ったってすぐパクられちゃうよ」
「ね〜」
「こ、困ります。駄目です」
「えー何でよ、けち。まだそんなに一杯持ってるくせに」
譲子の足元に置いてあった沢山のポスターの入った紙袋を見ながら少女が言う。
「なんならそれ全部くれてもいいんだよ。貼るの面倒なんでしょ?さっきからすごい嫌そうに貼ってるじゃない」
「そ、それは・・・」
ぐ、と譲子は言葉につまってしまう。
「ほら、こっちによこしなさいよ」
少女が紙袋に手を伸ばす。思わず譲子は紙袋を抱きかかえた。
「やめてください!!」
「何よ、親切で言ってあげてるのに」
「やめて!!」
紙袋を奪おうとする少女達ともみ合いになってしまう。
(ああ、どうしよう。先輩のポスターなのに!)
「・・・やめてくれないかな」
静かな声が譲子の耳に届いた。と同時に暖かい手が譲子を少女達から遠ざけてくれた。
「な、何?誰よ・・・っ、え、ええ!?」
「きゃ、きゃああっ!」
不意に現れた相手を睨んだ少女達の顔が驚きに変わる。それもそのはず、そこにいたのはポスターから抜け出たような美女・・・に見える青年。
「先輩!」
「譲子ちゃん、大丈夫?」
のぞみが優しく譲子の頭をなでる。そしてまだ呆然とポスターとのぞみの顔を見くらべている少女達の方へと向き直った。
「・・・君達も乱暴な事はしないでくれ。これは僕たちの文化祭を成功させる為の大事な物なんだ。分かってもらえないだろうか」
「す、すみませんでした」
少女達はさっきの剣幕はどこへやらで赤い顔でしおらしくのぞみに謝る。そして上目遣いでのぞみを見る。
「あ、あの・・・」
「もしかして、貴方がこのポスターの方なんですかぁ?」
(ああ・・・先輩、一番聞かれたくないことなのに)
譲子が心配してのぞみの顔を見るとのぞみは一つため息をついてから、にっこり、と少女達へと微笑んだ。
ポスターそのままの微笑に少女達が思わず固まってしまったのを見てから、のぞみは言った。
「ううん、よく間違われるんだけど違うんだよこれはボクじゃない」
「「ええっ!」」
思わず少女達と同時に譲子も声を上げてしまう。
(せせ、先輩!?何を言う気なんですか!?)
「・・・これはねボクのイトコなんだよ。西高で生徒会長やってるから、文化祭に来てくれれば本人に会えると思うよ」
「そ、そうなんですか。でもそうですよねこれどう見ても女の人ですものね・・・」
ごおおおおおっ
譲子はのぞみの微笑みがドス黒い勢いを増したような気がした。
「うん。でもイトコも男なんだよ」
「えっ!?」
「ボクより数段綺麗でかっこいいから、この写真より実物を見てほしいな」
「貴方より・・・」
「綺麗でかっこいい・・・」
「文化祭、来てくれるよね」
「「はいっ」」
少女達が手を振りながら去っていくのを見てのぞみも手を振り返す。
「・・・これで集客数アップ、っと」
「・・・」
「のぞむにも責任の半分は持ってもらわないとやってられないよね、譲子ちゃん?」
にっこり、と今度こそ本当の笑顔を見せてのぞみが譲子に微笑んだ。
「さ、残りのポスターもどんどん貼っちゃおうね!」
「・・・先輩。もしかして今の言い訳をずっと使う気ですね?」
「もちろん。ほら、開会式は西高でやるから生徒会長挨拶をするのぞむ君を見て納得してくれるよ。一石二鳥でしょ?」
にっこり。
(・・・先輩・・・だんだんのぞむ兄さんに感化されてませんか?)
機嫌のいいのぞみの後について歩きながら、軽く眩暈を覚える譲子であった。
written by sava
腹黒付与LvMAX
のぞみは腹黒付与Lv1を習得した。
のぞむへの遠隔攻撃
だが効かない
攻撃を吸収される
どうやら、相克関係のようだ。
「…やれやれ、馬鹿だよな。」
「臣?どうかしたのか?」
「いや、のぞみだけどよ。ポスターのモデルがのぞむだって言ってるらしい。開会式で見れば分かるってさ。」
「へえ。よくそれをのぞむが許してるな。」
「集客率が上がるから、構わんだと。」
「………なにか、あったのか…?」
あの、のぞむが…と将が青ざめる。
「そーじゃねーよ。まぁ、お前らはしらねぇか。」
「は?」
「のぞむが、生徒会長になったときの条件。『面倒ごとはてめぇらで片付けろ』だと。」
「それが…?」
「あいつ、開会式を終えたら、ぶっちする気だぞ。」
「………」
「当然、残って真面目に仕事してるヤツのほうに、客は流れるわな。」
目当てで来たヤツ、全部。
ぼそりという臣に、将があーと唸る。
「まぁ、譲と回るときくらいは顔を出すだろうが…」
「にしても、さ。のぞむは自分が女装したなんていわれて平気なのか?」
「譲がからんでっから。」
臣が肩をすくめた。
「ああ、ポスターの件で、落ち込んでたっけ。」
「そ。だからこれ以上もめたくないんだろ。それに…あいつにとって、譲以外のヤツの反応なんてどうでもいいだろうからな。」
「なるほど。譲はポスターのモデルがのぞみだって知ってるからな。」
「西高の人間もな。だから構わないんだろうさ。むしろ、恥ずかしがっているのぞみを庇ってるって、譲が無駄に感動していた。」
「……そっちが、狙いか?」
「先輩、モデルの人物は先輩だって言ってる人がいるの、知ってます?」
「ああ、それね。のぞみが言ったらしいよ。まぁ、あいつも男だからな。女装が恥ずかしかったんだろ。ポスターを貼っているときに、これが自分だとは言えなかったらしい。」
「……あんなに、綺麗なのに?」
「はは、男と女の子では、感覚が違うよ。」
譲に、のぞむが苦笑してみせる。譲には苦笑に見えるが、他の人間にはそれが悪魔の微笑みに見えた。
「…じゃぁ、先輩は、そう思われて嫌じゃないんですか…?」
「ん〜、騙してるようで気はひけるけど、それでのぞみが安心するんなら、いいかな。別に悪く言われているわけじゃないし。のぞみは無駄に恥ずかしがり(意訳するとへたれ)だからね。」
「先輩…。(なんて優しいんだ)」
譲が感動してのぞむに抱きつく。めったにない譲からの抱擁に、のぞむはご満悦だ。
のぞむはそのまま譲をぎゅうっと抱きしめ、にやりと笑った。
「ここ、生徒会室なんだけど…」
邪魔するなオーラを発するのぞむに、何も言えない役員たちだった。
written by sou
イラスト sava 文 sava & 総 2006.10.01
アルカイックスマイル 腹黒付与Lv.MAX 加筆訂正