君だけの天使
譲には守護天使がついている。
卵から孵ったばかりの雛のような、あの傷つきやすい少女を守るために、天から遣わされた守護者。
「・・・いいな」
ぼそり、と譲子が言う。
「何がだい?」
ヒノエが譲子の呟きを聞き逃さずに質問する。
だがそれは聞かれたくなかった言葉だったようで、譲子が少し困った顔になる。
「・・・いや、譲にはちゃんと受け止めてくれる人がいて、いいな、って思って」
「ふうん?譲子にはオレがいるじゃん。オレの腕はいつでもお前を受け止めるために空けてあるんだぜ?」
「はいはい・・・いつもそんな事ばっかり言ってて口が曲がらないか?」
「ひどいな。オレは本気なんだけど」
「はいはい」
「・・・まあ、オレもこんな野暮言いたくはねえんだけど」
「?」
「のぞみじゃお前を受け止めてくれないのか?」
「・・・!」
ヒノエの言葉に譲子が目を瞠る。
先輩は、優しい。
でもそれ以上決して譲子に踏み込んだりしない。
それが、哀しい。
譲子の思いを読んだヒノエがバツの悪そうな顔をする。
「・・・悪い。変なこと言っちまったみたいだな。今からのぞみのところへ戻るってのに」
「ううん・・・いいんだ。先輩が私を妹としか見てくれていないのは本当のことだから」
「そうかな」
「そうだよ」
「そうかな」
「・・・なんだよ。今日はやけにつっかかるなヒノエ。お前らしくないぞ」
「そうかな」
「おい、さっきからその台詞ばっかりだぞ」
くす、と譲子が笑う。
ヒノエの脳裏に先程の2人の姿が蘇る。
縋り付く緑の少女、受け止める桜の青年。
あまりにも彼らは似ていて。
いつか、目の前で同じ光景を見る日が来るかもしれない、そう思い知らされる。
「ちょっと、本気を出すのも悪くないって思ってね」
「ふうん。いいんじゃないか?お前いつもふらふらしてるから」
「ああ。お前がそう言ってくれるなら百人力だね」
ヒノエが破顔する。その笑顔に譲子もつられて微笑む。
のぞみ。お前が譲子を受け止めないなら、容赦なくオレが掻っ攫うからな。覚悟しておけよ・・・譲子の守護天使様。
written by sava
守る目 −もるめ−
視線の先でのぞむが譲を抱き寄せてるのが見えた。
いつものセクハラではなくて、まるであやすような抱擁。
譲がまだ幼いころ、のぞむがよくやっていたしぐさ。
だから俺は、あいつが譲の傍にいるのを止められない。
傍若無人、唯我独尊。
確かにそれはあいつの性格だけど。
けれど、あの姿もまた、あいつの本質なんだ。
譲が、迷い悩むときはきちんと導いてくれる。
ただ、自分の意のままにするのではなく
ただ、譲のいいなりになるのではなく
きちんと譲のことを考えて、あいつが一番傷つかないよう、正しい道を選べるように、見守って、導くように。
だから…
「きれいだね。」
「白龍?」
「強くて、優しい。とても綺麗な気だ…」
白龍が目を眇めてのぞむを見た。
「とても…こころよいよ。」
いつもの、幼子のような眼差しではなく…まるで全てを知る賢者の瞳。
この不思議な人は、時折このような目をする。
「そ…っか。」
我知らず、口元に笑みが浮かんだ。
「さて、白龍。つぎはどこに行きたい?」
「あそこは?なんだかにぎやかだよ。」
白龍と二人連れ立って、臣はその場を離れた。
心の片隅で、そっと見守りながら。
written by sou
有川バリアーへ続く
イラスト sava 文 sava & 総 2006.10.13日記
君だけの天使、守る目 加筆修正