有川バリアー
「あっ、あの人・・・」
「やっぱそうだよな、実物のがずっといいな」
「写メとっちゃおっと」
ざわざわざわ、カシャカシャ、と文化祭執行本部のテントの周りに途切れなく注目が集まっている。
彼等の目的はただ一人。ポニーテルの長身の美女(に見える青年)
これはのぞみも文化祭の告知ポスターのモデルになったときからある程度予測していた事態だったので、仕方なく見てみぬふりの対応している。
「お前声かけてみろよ」
「えっ、でも何て言っていいかわかんねえよ」
「休憩いつですかとか、一緒に回ってくれませんか、とか」
「うわ〜、言えねえよ〜」
いや、丸聞こえだから、お前ら。
将臣はうんざりと先程から何度となく繰り返される会話を聞いていた。
「よし、ちょっと俺、行って来るわ」
「おおっ!勇者!がんばれよ!」
中にはこういう無謀な奴もいるもんだ。勇気は買ってやるけど・・・仕方ねぇな。
「のぞみ」
「なに?将臣くん」
ばさり
「少し寒くなってきたから。ジャージでも羽織ってろよ」
「ありがと」
まずは先制攻撃。のぞみに長袖のジャージを掛けてやる。
案の定、勇者は声を掛けそびれてやがる。
「なあ、のぞみ、文化祭終わったら一緒に帰ろうぜ」
「帰るよ?何当たり前のこと聞いてるの。あ、そうだ将臣君の部屋にこの間CD忘れちゃったんだ。帰りに寄ってもいいかな?」
「ああ、もちろんいいぜ。なんなら泊まってくか?」
「うーんどうしようかな、着替え取りに家に一旦帰ってから又将臣くん家に行こうかな、いい?」
かわいらしく小首をかしげてのぞみが聞く。
本当にこいつ譲子がいない時は性別わからねえよな。
「ああ、俺はかまわないぜ」
にっこり笑いながらのぞみの肩など抱いてみる。
これで、勇者撃沈。
「あれ、彼氏、だよな・・・」
「そうだよな、あんな美人がフリーなわけないもんな・・・」
がっくりと肩を落としてすごすごと引き下がっていった。
「ねえ将臣くん・・・何でずっと肩に手を置いてるわけ?重いんだけど」
「ん?いいだろ。譲子が帰ってくるまでは俺がお前を
守らねぇといけないからな」
「・・・なんで女の子扱いなんだよ」
譲子早く帰って来い。変な連中がこいつを狙ってるぞ。
まあ、それまでは俺が守ってやるけどな。こいつは俺達の大事な幼馴染だからな。
written by sava
ガーディアン
「よ、将。」
「臣って、白龍じゃないか。」
「やぁ、将。」
臣と白龍が本部にやってくると、将が驚いてふたりを見た。
「なんで白龍がお前と?」
「黒龍と朔も来てるだろう?あいつ、あの二人には優しいってか、甘いから。」
その言葉に、事情を察して将が苦笑する。
「ご苦労さん。」
「お前もな。」
にやり、と臣が笑う。
「お互い、お守りは大変だよな。」
穏やかに白龍と話しているのぞみを見て、臣が言った。
「あ〜、まぁ、予想の範囲内だからな。一応望にも言われていたから。」
「あいつがぁ?」
臣が怪訝そうに言う。
「可能な限り、譲子をつけとけってさ。なんだかんだで、あいつも譲子には甘いからな。」
「ああ、そういやポスターを見て微妙な顔してたよな。」
出来上がったポスターを見て安心した譲とは反対に、哀しそうな顔を見せた譲子。
良心の呵責などという、のぞむの辞書には載っていないはずのものを感じさせることのできる、数少ない人物。
「それでフォローをいれたってか。ふん。開会式の挨拶も、その関係かよ。
それを利用して、サボリを決め込むあたりは、さすがだが。」
臣が呆れながら言えば、将がフォローする。
「のぞみが言ってたけど、開会式までの仕事ぶりをみれば、休むのは当然だそうだ。
確かにそれだけの仕事はしているようだが。」
「は?珍しいな、お前がそんな風に言うなんて。」
臣に言われて、将が苦笑する。
「…あらためて見れば、あいつの配置って、すっげー無駄がねぇんだわ。
休憩がほとんど取れなくても、ある程度文化祭を回れるように交代で見回りを組んでるだろ?
でもって、俺らみたいにじっとしているのがだめなヤツは見回り中心。逆に体力なさげなやつは本部で案内と連絡中心。
そのくせ、多少は遊んでも大幅にサボれないような時間で、本部へ定時報告義務までつけてやがる。」
「まぁ…人材を見抜くのも、それを扱う腕も、一級品だからな。だもんで、ぜひ会長にって拝み倒されたんだよ。
プライドは一級品。それに伴う実力もある。そして、同じくらいの責任感も…な。
ま、最後のヤツは知ってる人間のほうが少ないが。」
傍若無人だからな。
素直にほめるのも悔しいのか、ぼそりと臣が言う。
「見回りのヤツから、のぞむからの報告ってのを聞いて驚いたが。」
「見回りするヤツのコース、時間、配置なんかは全部頭ん中に叩き込んであるらしい。
一応、それらと何回かは接触するように、回ってるみたいだぜ。」
「…なんか、あいつがそんな真似すると、裏があるように感じるんだが…」
「裏ってか、あいつがそこまでする理由なんか、一つだけだろうが。」
「って、譲?」
そこで即答できてしまうあたりが、将臣だからなのかのぞむが解り易いのか。
「自分たちだけ遊んでる間に、何かがあって文化祭がダメになったら、生真面目なあいつが落ち込むだろ。」
「それだけ…か。」
「それだけだ。」
こくりと頷く臣に、将が呆れとも感心ともつかぬため息をもらした。
「ほんっとうに、のぞむの世界は譲中心に回ってるんだな。」
「そりゃぁ、もう。あいつは譲の守護天使だそうだから。」
「なんじゃそりゃ。」
「白龍がそう言ったんだよ。」
羽が黒そうな天使だよな。
将と臣がくつくつと笑った。
written by sou
譲子バリアーへ続く
イラスト sava 文 sava & 総 2006.10.14日記
有川バリアー、ガーディアン 加筆修正