譲子バリアー
「先輩、遅くなってすみません!」
「お、譲子が帰ってきたぞ」
沢山の差し入れを持って本部に譲子とヒノエが帰ってきた。
「ヒノエ君ありがとう。悪かったね」
「・・・いや。おかげで楽しませてもらったよ」
「もう!ヒノエのせいで遅くなったんだぞ!謝れよ。あちこち引っ張りまわすから!」
「ううん、ゆっくり見て回れたんならそれでいいんだよ。今の所本部も落ち着いているから。この後はまた忙しくなっちゃうからね。・・・よかった」
にこにこ笑いながらのぞみが言う。
「先輩、もしかして」
はた、と譲子がのぞみの意図に気が付く。
のぞみは譲子の表情に気が付かないふりをして袋を受け取り、がさがさと品物を机の上に並べはじめた。
「さ、何買って来てくれたのかな〜。わ、焼き芋だ。ほら皆食べようよ」
「おう!ほら白龍も一緒に食おうぜ」
「わあ、これは何?ふわふわ。タマみたいだね」
「これは綿菓子だ。お、飲み物も買って来たのか。よしよし」
わさわさと食い物に群がる役員達。
「ヒノエ、そういう事だったのか?」
譲子がヒノエに聞く。
「ん?何の事だい」
「とぼけるなよ・・・わざと私を引っ張りまわしたんだな」
「わざとじゃないさ。チャンスがあればお膳立てされなくてもそうするつもりだったんだから」
「・・・悪かったな、散々文句言ったりして」
「譲子の文句はいつも聞いているからな。慣れっこさ」
「ひどいな。だいたいお前が文句言われるような事ばかりするからだろ」
「そうかい?お前以外の女からの苦情は全く来ないぜ」
「私をそういうのと一緒にするなって言ってるだろ」
「特別扱いして欲しいって事かい?いい傾向だね。やっとオレの魅力に気が付いてくれた?」
「寝言は寝て言え」
「それはオレと一緒に寝てくれるって事?」
「・・・永眠しろ」
「おい、いいのかよのぞみ」
先程から聞くともなしにヒノエと譲子の会話を聞いていた将が眉間に皺をよせてのぞみに言う。
「ん?なにぐぁ?」
「・・・芋を口から離せ。あの2人ずいぶん仲がいいんじゃねぇの?譲子をほっといていいのか」
「え、ヒノエ君ならボクの友達でもあるし大丈夫だよ」
「お前、正気か?疲れすぎておかしくなったか?あいつと譲子をくっつける気かよ」
将と臣が焦れてのぞみに食ってかかる。
のぞみは譲子に視線を向け、気が付いたように言う。
「あ、ああ・・・本当だ。あれじゃ駄目だね。ちょっと行ってくる」
「「よっしゃ!」」
将&臣が握りこぶしで応援する。
「譲子ちゃん」
のぞみが譲子に話しかける。
「はい」
「そのままじゃ駄目だよ風邪引いちゃう。寒くなってきたから上着着ておかないと」
そう言ってのぞみは譲子にジャージを着せてやった。
「「そういうことじゃねえ!!」」
将&臣、Wツッコミ。
「あ、ありがとうございます。わ、あったかい」
「ね?Tシャツのままだとやっぱり寒いでしょ?」
「ほんとだ・・・着てみないと気がつかないなんて私も抜けてますね」
「そんな事ないよ。譲子ちゃんはしっかりしてるよ。でもいつもボク達がそれに甘えちゃうんだよね。ごめんね」
「いいえ、そんな事ないです!先輩はいつも・・・」
言ってから譲子は気がつく。
そうなのだ。のぞみはさっきの事にしても今の事にしても譲子のことを思って色々としてくれるのだ。
「・・・私のこと、見ててくれるじゃないですか」
それに気がつかなかったのは、自分の方。
「譲子ちゃんは小っちゃいからねぇ。ちょっと目を離すと見失っちゃうんじゃないかと心配で心配で」
「先輩、ひどい〜。これでもちょっとは伸びたんですよ!」
「え?154センチから伸びた?」
「・・・155になりましたっ!」
「そっか〜、そういえばちょっと顔が近づいたかな」
ひょい、とのぞみが譲子の顔を覗き込む。いきなり近づいた顔に譲子が赤面する。
「あれ、赤くなった。ふふっ、かわいい」
「//////先輩〜〜っ!!」
「・・・」
「・・・」
口から砂を吐く将&臣
「・・・おい、オレにも何か飲みもんくれ」
ヒノエもいたたまれず本部のテントにやってきた。
「天然・・・だな。あの2人」
「あのラブラブオーラ、どうにかならねえか」
「さっきのぞみをけしかけたのは将だろうが」
「臣もだろ。・・・しかしこっちもきついよな」
「のぞみ、ひでぇよな・・・オレの事全く警戒してねぇ。あいつは悪魔か」
「ある意味、そうだよな」
「へたれだけどな」
あいかわらずの2人の世界に、ほっとするようなうんざりするような本部(+ヒノエ)であった。
written by sava
白い羽の悪魔
「なかよしだね。」
白龍がにこにこと笑う。
「白龍…」
砂を吐いていた3人が、白龍を奇妙なものを見るような目で見た。
実際、奇妙な者ではあるが。
「うん。とても綺麗。あの二人も、将臣たちも。」
「………白龍、それしか知らねぇのかよ。」
「?うん?綺麗なものは、きれいだよ?」
白龍が不思議そうに首をかしげた。
「ね、たま。私は変なことをいったかな?」
「ンニャァ」
返事をする白猫と、白い白龍。幼子のようなそのやりとりに、本部にいる人間が笑みを浮かべる。
綺麗な霊気
初めて将臣たちを見たときもおもったけれど。
ここまで類似した気を放つものも珍しい。
だから、面接まで気付かなかった。
二人が別人だということに。
二人そろってきたときは、本気で分裂したのかと思ってしまったのだ。
彼女たちも、そして、彼らも、そう。
互いが、まるで水面鏡に映したような存在。
お互いが影響しあって、時にくもり、そして輝く、そんな相手。
自分と黒龍のそれとは微妙にことなる…対の存在。
先ほどの桜の青年も、この目の前にいる桜の青年も、言動は異なれど、その本質は等しくみえる。
「…天使も、悪魔も。元は、同じ存在だから。」
ただ、その力の使い方が、違っただけ。
「白龍?何か言ったか?」
臣に言われて、白龍はニコリと笑って答えた。
「みんな、仲良しで、綺麗。心地よいよ。」
「あ〜、そりゃ、どうも。」
「ところで、そろそろあのバカップルを止めないか?」
「…止めるのも疲れるが、そのままでも消耗するからな…。」
臣に言われて、将が重い腰を上げた。
「頑張れ…」
ぽん、と臣が将の肩に手を置けば、なぜか周りから黄色い悲鳴がちらほらと。
「…?なんだぁ?」
「あ、さっきまでのぞみのシャメをとってた連中。」
「は?」
一部の特殊な思考と嗜好を持つ女子達が、似合いすぎる男二人のじゃれあいを写真にとりまくっていたのだが、
臣はただのぞみがモテるとしか考えなかったのだ。
さらに自分たちも同じ理由で写メられていたことには気付かなかったご様子。
勘の良いヒノエは、なんとなく理由を察して、さりげなく二人から距離をとっていた。
「同じ顔が珍しいってか?」
「あ〜、かもな。」
ある意味、二人も天然だった。
written by sou
イラスト sava 文 sava & 総 2006.10.15日記
譲子バリアー、白い羽の悪魔 加筆修正