ご褒美
将臣が本部に戻ってきた。
「よ、ただいま」
「おう。・・・その様子だとのぞみは逃げ切ったようだな」
臣が面白そうに言う。
「ああ。全く知盛にも困ったもんだ」
「のぞむもあいつの扱いには手を焼いているからな」
「はは。のぞむにはあれくらいでちょうどいいだろ。
のぞみはな・・・生理的嫌悪感が先に来ちまうから逃げるしかねぇんだろうな」
「あいつはノーマルだからな。良かったな譲子、のぞみはホモにはならねぇってさ。・・・譲子?」
譲子はぷいと横を向いたままだった。
将臣は譲子の傍に行く。それでも譲子はぷいとそっぽを向く。
その子供じみた行動に将臣がぷっと笑い出す。
「譲子、拗ねんなよ」
「拗ねてなんか、ない」
「くくっ。のぞみに置いていかれてショックなんだろ」
「べ、別にそんな事ない・・・」
言い訳する譲子の頭を抱えて将臣が譲子の顔を覗き込む。
「『春日先輩がいなくて淋しい』って顔に書いてあるぜ」
「どうせ私の顔は文字が書けるほどのっぺらです」
「ほら、やっぱ拗ねてるじゃねぇか。お兄ちゃんが慰めてやるから元気出せ」
がしがしと譲子の頭を撫でてやる。
「やめろよ、気持ち悪い。だいたいお兄ちゃんてガラかよ」
「そうか?俺ほど優しい兄貴はいねえと思ってんだけどな」
「・・・自分で言うところが胡散臭いよ」
「ふーん、そうか?」
にやり、と将臣が笑う。
「今日の文化祭が終わったらのぞみが家に泊まりに来る約束取り付けてやってんだけどなぁ」
「え・・・?」
「どうだ?これでも兄貴に感謝する気にならねぇか?」
「ほんとに?先輩、今日家に来るの?」
「ま、お前文化祭がんばったからな。ご褒美ってやつだ」
「お兄ちゃん・・・!!」
譲子の顔がぱあっと花が咲いたように明るくなる。
「ぷっ、お前正直すぎ」
将臣が苦笑する。譲子も慌てて顔を引き締める。
「あっ、間違えた。兄さん。・・・でも、ありがと」
「どういたしまして・・・ってか」
「あ・・・でも」
「ん?どうした?」
「兄さんのご褒美は?」
「あ?俺?」
「兄さんが一番頑張ってるじゃないか。休憩も全然取らないであちこち引っ張りまわされて・・・
兄さんにこそご褒美もらう権利があるだろ」
「・・・俺は、もうもらった、かな」
「え?」
花のような笑顔と『お兄ちゃん』の呼び声。
そして、束の間の2人きり。
(譲子、ずっとのぞみべったりだったからな)
「・・・ならいいんだけど?」
「ああ・・・いいんだよ。あ、でもくれるっつうんなら何でももらっとくけどな」
「兄さんらしいな」
クス、と譲子が笑う。その頭をよしよし、と撫でてやる。
お兄ちゃんも、悪くないよな。
のぞみ、もうすこし帰ってこなくていいぜ。
written by sava
お帰りなさい へ続く
イラスト & 文 sava 2006.10.29日記
ご褒美 加筆修正