お帰りなさい
のぞみが知盛を撒いて本部に戻ると譲子が駆け寄って笑顔で出迎えてくれる。
「おかえりなさい、先輩」
この笑顔の元に自分は還るのだ、とのぞみは思う。いつでも。たとえどんな事があったとしても。
「・・・ただいま」
written by sava
兄のご褒美
「ただいま、兄さん。」
「お、戻ったか、譲。」
「今日は逃げなかったんだね。」
のぞむと共に本部へ戻ってきた譲が、臣に言う。
「あー、まぁ今日くらいはな。」
「明日もあるだろ。」
臣の言葉に、譲が突っ込む。
西高生徒会長として、終了の音頭をとっているのぞむを見つつ、臣が笑った。
「楽しかったか?」
「う、うん。」
申し訳なさそうに言う譲の頭を、臣がそっと撫でた。
「なら、いいさ。」
「兄さん。」
譲は複雑そうな顔をしたあと、臣の手を引っ張った。
「ん?どうした?」
「…ありがとう、兄さん。」
やわらかな笑顔で告げる譲。
嬉しそうに、ほんのりと頬を染めて微笑む譲は、とてつもなく愛らしくて。
ほとんど条件反射で臣は譲を抱きしめた。
「譲ぅー!」
「ちょ、兄さん!」
ドガッ!!
「てめぇとは決着つける必要があったな。」
「それはこっちのセリフだ!!」
いつもの、けれど珍しいバトルが始まる。
「あああ、またこのパターンだ…」
譲が頭を抱えると、東高在籍の従兄弟達が集まってきた。
「のぞむから攻撃を仕掛けるのは珍しいパターンだがな。」
「だいたい、臣兄さんが攻撃を始めますからね。」
「ほんとだ。珍しい。」
「将兄さん、譲子、のぞみくん。珍しがってないで、止めないと。お仕事終わらないよ。」
「「「それ、俺(私・ボク) の仕事じゃねぇ(ない)から」
見事に重なる言葉に、譲がうなだれる。
「ほら、行って来い。」
お前の仕事だろ?と、将に背中を押されて、譲が一歩踏み出す。
そして…
「兄さん、先輩、そろそろやめてください。帰れませんよ。」
「「了解!!」」
譲が声をかければ、即座に止まる二人。
そんな様子を、西高役員はもとより、東高役員も微笑ましく見ていた。
なんとか片付けた帰り道、譲が臣に言った。
「兄さん、何か食べたいものある?」
「ん?珍しいな。」
「今日一日、真面目に仕事してたみたいだから。ご褒美。」
譲がちょっと照れたように言う。
その顔をみて再び抱きつきそうになり、のぞむと互いに牽制しあう。
「ああ、まぁ…。お前が作ったものなら、何でもいいぞ。」
「なにそれ。そんなんでいいの?」
「ああ。それに…褒美はもう、もらったからな。」
「え?」
譲が不思議そうに見たが、臣は譲の頭をがしがしと撫でた。
「兄さん!」
もう、と怒る譲を見て、臣が小さく笑った。
『ありがとう、兄さん』
あんな可愛らしい笑顔を向けられたら、一日の疲れも吹っ飛ぶさ。
兄の醍醐味ってヤツだな。
丸一日譲を独占して、悪いと思っているかどうかは謎だが、のぞむも珍しくつっかかってこない。
文化祭の帰り道は、珍しく穏やかだった。
written by sou
イラスト sava 文 sava & 総 2006.10.29日記
お帰りなさい 加筆修正 兄のご褒美 追加