麗しの君



「あら…経正さん?」
麗慶が見覚えのある後姿に声をかける。
麗慶の声にゆっくりと振り向いた経正の顔は、声の主の姿を認めたとたんに笑顔で溢れかえる。
そのあまりに素直な、あまりに変わっていない反応に麗慶も微笑を禁じえなくて思わずこぼれた笑みをかみ殺す。

「ご無沙汰しております、経正さん。丁寧なお手紙をいただいておりましたのにお返事も差し上げず失礼いたしました」
「い、いいえお気になさらずに。謝るべきなのは突然不躾にあのようなものを差し上げた私の方ですから。
 麗慶さん…い、いや、名前を呼ばれるのはお嫌いでしたね。武蔵、さん。お久しぶりです…お元気でしたか?」
「ええ、私は変わらず。経正さんもお元気そうで何よりです」
「ありがとうございます。武蔵さんもお元気そうで…相変わらずお美しいですね」
経正はそう言うとにこり、と笑って目を細めて麗慶を見つめる。
麗慶は返す言葉もなくただ苦笑する。

(敵いませんね…)

麗慶の耳には聞きなれた誉め言葉。
普段の麗慶ならばさらりと無視するところだが経正の口から出ると否定する気にもなれない。
それはけして世辞ではなく経正が本当にそう思ってそう言っているという事が分かるから。
桜が好きなんです、といつか言った時と同じ口調で語られていたから。

ふんわりと麗慶が微笑む。その偽らない微笑みに経正の胸が痛むとも知らずに。

「ああ、平殿。よくおいで下さった。敦盛にはいつも世話になっている」

麗慶の隣にいた九郎が2人の間に漂う雰囲気を察する事もなく、しっかりと経正に挨拶をする。

「…ええ本当に。敦盛君はとても落ち着いた学生で、さすが経正さんの弟さんだと私も常々感心しております」

にこりと微笑んで麗慶が言えば、経正も嬉しそうに微笑む。
しかし九郎の耳に聞こえてきたのは麗慶の容赦ない叱咤の声。
(あ゛あァ!?九郎!仮にも理事長が生徒に世話になってどうするんですか!阿呆にも程があります)
麗慶の黒いオーラを一身に受け己の失言を身をもって知る九郎。

「ありがとうございます。こちらこそ弟がお世話になっております。私はともかく弟は年に似合わずしっかりしておりますから。
実は私も助けられることがしばしばなんですよ」
「そ、そうだろう!ほら、麗慶。敦盛に助けられているのは俺だけじゃないぞ!」

渡りに船というように、九郎は麗慶にぶんっと音がするのではないかというかの勢いで振り向いて言った。
麗慶はそんな九郎ににっこりと微笑みを返す。
その笑顔は聖母さながら全てを包み込む優しさに満ちている(ように経正には見えた)

もちろん、この笑顔の意味するところは九郎にはよく分かっていた。

(墓穴掘ってるんじゃねえよ、このボケが!経正さんが助け舟を出してくれたからといって、それにちゃっかり乗るなんて
 無能をさらにさらけ出しているようなもんだろうが!少しは学習できんのか!脳の栄養そのロン毛に全部食われてんじゃねえのか!?)

微笑みひとつでここまで意志伝達できるのは、もうほとんど超能力じゃなかろうかと
九郎はうっすらと額に滲み出した汗をぬぐいながら思う。
※もちろんこの声は九郎以外には聞こえていません。


「…敦盛は学園ではどうですか?いえ、楽しそうにしているのは分かっておりますが」
「良い生徒だ」
どこか心配そうに訊ねる経正に九郎がきっぱりと断言する。
「生徒会長を退いた今も、陰から生徒会の手助けをして皆を支えている。
下級生からもよく慕われているようだし当学園としても敦盛のような生徒がいるのは誇らしい事だと思っている」

微かに麗慶は眉を上げて九郎を見る。

「そうですか。そう言っていただけると安心いたします」

経正がまるで自分の事を誉められたかのように嬉しそうに微笑む。

九郎の属する源グループと、経正兄弟の属する平グループとは因縁の仇敵、いわばライバルグループだ。
ゆえに源の血脈の者は青龍学園に、平の血脈の者は他の学校へと通う暗黙の了解がある。
平の名を持ちながらも九郎が理事長を務める、ここ青龍学園に入学した敦盛はいわば例外中の例外ともいえる存在なのだ。
兄の経正が案じているのも、そこなのだろう。

だが九郎はそんな事など頓着していない。
ただ学園に通うひとりの生徒として、素直に敦盛を評価している。

(…九郎も、いい男になってきましたね)

隣に並んだ時にこうして麗慶が九郎を見上げるようになったのはいつからだろう。
いつまでも頼りないと思っているのは自分だけなのかもしれない。

「よろしければ理事長室で茶など差し上げたいと思うのだがいかがだろうか?なあ、麗慶」
「そうですね。経正さんのご都合さえよろしければ、是非」

にこり、と笑って言えば経正の顔がぱっと明るくなる。

「そ、そうですね。敦盛の様子ももっと伺いたいですし…」

と、経正が承諾しようとした時…

ぼたぼたぼたぼた!!

「う、うわっ!?」
「な、何だコレはっ!!」

カエルの集団が上から経正めがけて降ってきた。

「かっ、カエル!?」
「ええええっ、ど、どうして…」

はっ!と麗慶がカエルの落ちてきた窓を見上げる。

「弁慶!!」

そこには案の定、にやり、と笑う己が弟がいた。

「ああ…すみません。つい、うっかり生物部の展示品を落としてしまいました」
「弁慶!気をつけろ!うっかりですむかっ!!…すまぬ。うちの教師の失態だ」
九郎が経正にぺこりと頭を下げる。麗慶も弟を困ったように見上げて(つまり殺さんばかりに睨みつけて)から経正に謝る。

「申し訳ありません。お怪我はありませんか?」
「いえ、大丈夫です。展示品…ああ、本当だおもちゃですね。本物だったらどうしようかと思いました」

は〜、と胸を押さえながら言う経正を見て、麗慶はかわいらしい事だと苦笑しながら聞いた。

「カエルが苦手ですか?」
「いえ、生き物でしたらあの高さから落とされたら死んでしまうでしょう?…それが心配で」
「…まあ」

麗慶は思わず目を瞠る。
本当にこの人は変わっていない。優しさも、別れたあの時のまま。

「それにしても、これくらい避けきれないとは駄目ですね。情けないかぎりです」
「いいえ。そんなことはありません。うちの愚弟が悪いんです。本当に申し訳ない…」
「弟…?ああそういえば先程、名を聞いてもしやと思ったのですが、あれは弁慶君、ですか?」

経正の声に答えるように、2階からひょい、と弁慶が事も無げに白衣の裾を翻し飛び降りてくる。

「申し訳ありません。窓際に展示してあったもので落としてしまいました。
 おやこれは…姉の元婚約者の平経正さん、でしたか。知らぬ事とはいえ驚かせてしまったようですね。申し訳ありませんでした」

白々しい!と睨みつける麗慶をさらりと無視して弁慶は経正へと謝った。

「ああ、弁慶君、お久しぶりです。君もこの学園で教師をされていたんですね。弟がお世話になっております」

経正が礼儀正しく弁慶に挨拶をする。

「いえ。敦盛君は優秀ですからお世話をするほどの事はありません。
 それよりも元婚約者の経正さん、今日はお一人で?奥様はご一緒ではないのですか?」
「い、いや…生憎まだ妻はおりません。しがない独り者でして…はは、は」
「ああ、これは重ね重ね失礼を…、姉との縁談が破談になってからだいぶ経つので、
 僕はもう、てっきりもうどなたか良い方と一緒になられているものだと勘違いしておりました」

ぐさぐさぐさ!!
弁慶の言葉のはしばしが経正に突き刺さる。

「…すみません。躾の行き届かぬ愚弟が本当に失礼なことばかり申し上げて…お許しください。
姉としてお恥ずかしい限りです。弁慶…お願いですからこれ以上私に恥をかかせないで下さい」
(べぇぇぇんけえぇぇぇ!!!おんどりゃ、何考えてるんじゃあ!!頭から塩かけて食ってやろうか?それとも
 コンクリ詰めにして海に叩き込んでやろうか!?ああ゛!?)

麗慶の声なき怒号が辺りに響き渡り、九郎が青ざめる。しかし当の弁慶はどこ吹く風で、
後から慌ててやってきた生物部の部員達とてきぱきとカエルのおもちゃを回収している。

「弁慶っ!!」
業を煮やした麗慶がついに叫ぶ。

「ああ、姉さん、そんなに怒ると折角の美貌が台無しですよ。そんな顔をリズ先生が見たらどう思うでしょうね」
「リ、リズ先生は関係ないでしょう!」
ふいにリズヴァーンの名をだされ、思わず赤面する麗慶。
リズヴァーンは先程写真部の展示を見にいくといって別行動となったのだ。

「君の失態について私は怒っているのです。いつから己の失態を素直に謝れないような狭量な心の持ち主になってしまったのか…残念なことです」

麗慶は弁慶に向かって愁眉をひそめて言う。
当然この愁いを秘めた顔の裏では怒号が轟々と響きわたっている。(主に九郎を直撃していたが)
2人のやりとりに何か感じるものがあったのか、ふ、と経正から笑顔が消え、弁慶の顔をちらりと見てから言った。

「いえ、どうぞ…弁慶君をそのようにお責めにならずに。もう先程謝っていただきましたし、
確かに少々驚きはしましたが…まあ、子供の悪戯と思えば気にもなりませんよ」

にっこり。
びしびしびし。

微笑みつつ弁慶を牽制する経正と、経正に子供扱いされて背中から黒い瘴気を湧き上げている弁慶が対立する。

「敦盛や敦美達も小さい時にはこのようによく悪戯をしたものです。弟妹というのはいくつになっても可愛らしいものですから」
(こんの小姑!シスコン!麗慶さんを行かず後家にでもするつもりか!)

「…お心が広くていらっしゃるんですね。経正さんのような方は早く良い方と巡りあって幸せな家庭を築いて頂きたいですね。
いつまでもお独りでいるのはお淋しいでしょう。折角の休日に弟の文化祭にわざわざおいでになるほどですからね」
(諦めの悪い男だな!いつまで姉さんを諦めないつもりだ。こんな所にまで父兄面してのこのこ現れやがって、お前の魂胆なんかバレバレだ!)

キシャアアアア!
ガァアアアアア!

一見仲良さげに微笑み合いながらも、その背景は龍虎対決の図の2人。
周りにいた学生達もあまりの雰囲気に思わず後ずさっている。

「…あの2人が麗慶と化している」

うっかり九郎が本音を漏らし、当の麗慶に足を踏まれて声なき悲鳴を上げる。
ちなみに麗慶の履いているのは7センチピンヒール。現代の誇る立派な武器だ。
痛みで涙目になりながらも九郎がいう。

「麗慶、あの2人をどうにかしろ!」

written by sava

叫びながら隣の麗慶を見た九郎の目に飛び込んだものは、
いつもの冷ややかな笑顔ではなく、強かな笑みでもなく…
穏やかな、それでいて楽しげな笑顔。

九郎が呆然とそれを見つめれば、気付いたらしい弁慶と経正も麗慶を見つめる。
振り向いた経正に、麗慶はくすくすと笑って言った。

「…わたくし、経正さんは優しい方だとばかり思っておりましたけれど…
思いのほか、強くていらっしゃいますのね。」
弁慶と話せるなんて…と麗慶が微笑む。

その言葉の裏まで理解した経正が、わずかに顔を赤くして答えた。
「あ、いえ…すみません。お騒がせしてしまって。」
「原因をつくったのは、こちらですから。お気になさらないでください。ねぇ、弁慶。」
いつもの笑顔に戻って麗慶が弁慶に言えば、今度は素直に謝罪が返ってきた。

「ええ…。すみません。文化祭とはいえ少々遊びすぎましたね。」
「ああ、そうですね。お祭りですから。」
弁慶の言葉に、経正も苦笑して答えた。

弁慶が生物部員達に指示して、引き上げさせる。
ふと周りを見れば、何人もの生徒が…近寄るわけではないのだが、遠くからこちらを見ている。
そんなに騒いでいたのかと思ったが、どうやらそういうわけでもないらしい。
九郎もそれに気付き不思議に思っていれば、リズヴァーンが戻ってきた。

「どうかしたのか?」
「リズ先生。いえ、それが…」

麗慶が困惑しながら回りに視線をめぐらせれば、視線を向けられた生徒達がなにやら騒いでいるように見えた。

「ああ…たぶんあれだろうな。」
そんな様子をみて、リズヴァーンが言う。
「あれ?」
「写真部の展示だ。のぞむの出品作を見てきた。」
首をかしげる麗慶にリズヴァーンが差し出したのは写真部のパンフレット。
春日望(西高)の欄を見れば…

「………………やられた…っ!」
「これはまた…」
「みごとなものですね。」
「いつ撮ったんだ?」
経正や弁慶、九郎も覗き込んで呟く。

そこには、2枚の麗慶の写真。
一枚は毅然と校内を歩くいつもの麗慶だが、問題はもう一枚。
花壇の片隅で、園芸部の花を眺めている麗慶。

柔らかな笑みを浮かべるその姿は、普段の毅然とした理事長秘書の雰囲気とはことなり、可愛らしく、かつ美しい。
一枚が薔薇やカトレアを背負うような姿ならば、こちらはさしずめこでまりか雛菊のような、あどけない笑顔。

自分がいつ撮られたのか、気付かないとは…!

麗慶が黙り込む。
それを見て、リズヴァーンがくすりと笑った。

「お前の負けだな。ポスターの時にあんな条件を出すからだ。」
「う…まさか、こんな写真を出すとは、思わなかったんですよ。」

文化祭のポスターを作る時にのぞむが言ったのだ。


『覚えてろよ。写真部に、俺の撮ったお前の写真を出品してやる。』
『私を納得させられるポスターが出来上がったなら、ご自由にどうぞ。』
『よし。了承はとったからな!』


てっきり自分のおかしな写真を撮ろうとやっきになるものと思っていたのだが。
そして、そんな写真は撮らせない自信もあったから、ああいったのだが…
まさか、こんな形で仕返しをしてくるとは。

ただでさえ、理事長秘書として学園に出入りする麗慶に憧れる生徒は多い。
だが、その毅然とした雰囲気から、近寄りがたく思うものも少なくはない。
そこにこんな写真を見せられたら…

確実に、ファン倍増。
あしらう手間も倍増。

「やられた…」

再び呟く麗慶を、リズヴァーンがからかうようにいう。
「手ごたえがあるだろう?」
「ありすぎますよ…」
麗慶がため息混じりに呟いた。
「このお返しは、どうしましょうね。」
「ほどほどにな。もともとはお前の悪戯が原因なのだから。」
リズヴァーンに言われて麗慶はほんのりと頬を染めて、はい、と答えた。



「あれを、知らなければ。」
「弁慶君?」
ぽつりという弁慶に、経正が驚いて隣を見る。
「僕も、貴方で納得できたのだと思います。」

弁慶の視線の先には、頬に朱色をのせて微笑む麗慶。
恥らうような笑みが、少女のように幼げで、いとけなくて。
そのくせ、ほのかに艶やかな笑み。

麗慶が、リズヴァーンを慕っていなければ。九郎を特別に思っていなければ。
経正でも、いや、経正ならば納得できたのだろうと、弁慶は思った。
経正は他でもなく麗慶自身を愛しているし、麗慶もまた経正を気に入っているのだから。

縁談の相手で、彼以上に麗慶の近くに来たものはいない。
一時は婚約を了承したほどに。

だからこそ、弁慶は必要以上に経正を敵視してしまうのだ。
麗慶にその気は無いとわかっていても。



リズヴァーンが現れてから、麗慶の意識は完全に彼に向けられている。
自分が見たことのないような笑顔を向ける麗慶。
経正にも、それが意味するところは分かりきっていたが。

「それでも…忘れられるものならば…そうしています。」
だから、女々しいといわれるのでしょうね。
自嘲するようにいう経正に、弁慶が僅かに目を見開いた。

高嶺の花だと分かっていても、いや分かっているからこそ。
手に入れることも、諦めることもできなくて。


「すみません…」
先ほどと同じように呟かれた言葉は、けれど先ほどよりも深い思いを感じて、経正は穏やかに微笑んだ。
「いえ。お互い様ですから。」
そう言って、苦笑しあう。


「では、私はそろそろお暇しますよ。」
「え?あら、経正さん。」
すみませんと経正に向ける麗慶の笑顔は、いつもと変わらず美しい。

そう、いつもの笑顔。

それを悲しいと思うわけではないのだが、経正もいつもの穏やかな笑顔で告げた。
「そろそろ弟妹たちが心配しているでしょうから。」
「あ、そうですね。ごめんなさい。お引止めしてしまって。」
「いえ。久しぶりにお話できて楽しかったですよ。」
「こちらこそ。愚弟がご迷惑をおかけしました。」
「いえ…それでは。」
「ごきげんよう、経正さん。敦盛くんと敦美さんに宜しくお伝えください。」
「はい。麗慶さんも、皆様もお元気で。」

お辞儀をして立ち去る経正を見送ると、麗慶が弁慶を睨んだ。
「で?私に恥をかかせた愚弟は、私に何をしてくれるのでしょうね。」
「お詫びならしましたよ?」
弁慶がにこりと微笑む。
黒い瘴気が吐き出され始めた麗慶に、九郎が思わず逃げそうになるが、麗慶がそれを引き止めた。

「ああ、理事長。先ほどのユニークな発言の件で、お話がありますが…お時間よろしいですね?」

確認というよりは、強制。
そんな声音で麗慶が言うので、九郎の額に冷や汗が浮かぶ。

「あ、いや、それは。」
「理事長室で、お茶でも差し上げましょう。逃げるな弁慶!」
生物室へ戻ろうとした弁慶を、麗慶が有無を言わせぬ声で留める。
「公私混同はいけませんよ、姉さん。」
引き攣った笑みで振り返る弁慶に、麗慶がにこりと、その彫刻のように整った美貌にふさわしい、氷のような微笑を浮かべた。
「なればこそ。理事長秘書として、この学校の教師の態度に一言申し上げましょう。」
逃がさぬとばかりに九郎と弁慶の背を押して理事長室へ向かう麗慶。

「ああ、リズ先生。よろしければご一緒に。」
やわらかな笑みで告げる麗慶に、リズヴァーンも微笑む。
「うむ。」
周りが思わず道を空けてしまうような黒い瘴気も、リズヴァーンにとっては弟を可愛がる姉にしかみえなくて。
くすりと笑いながら3人の後ろへ続いた。

それを見ながら、弁慶はもう暫くこの関係が続きそうだと思った。
そしてそれを崩そうとするものが現れたなら、誰であろうと容赦なくつぶしてやろうとも。

先ほどまで固まっていたくせに、小さく笑う弁慶を不審そうに見ながら、麗慶は九郎を引きずるようにして理事長室へと入っていった。

この後、二人の弟が女帝にどのような目にあわせれたのかは、リズヴァーンだけが知る。
リズヴァーンいわく、『可愛いものだ』そうだ。



written by sou


イラスト sava   文 sava & 総 
麗しの君 書き下ろし 07.02.08-10