そわそわ



「経正お兄様・・・?」
「あ、ああ」
「どうなさったのですか?先程から落ち着かれないご様子ですが・・・」
「いや、なんでもないよ。中々盛況だなと感心していただけですよ」
「そうですか・・・?」

そんな兄の様子を見て敦盛はこっそりと妹に耳打ちする。
「敦美・・・お前は以前兄上の婚約者であられた麗慶さまを覚えているか?」
「ええ、麗慶お姉さま。私、あの方が本当の姉上になられたらどれほどよいかと思っておりました。でも確かアメリカに留学されたとか」
「・・・今、この学園の理事長秘書として日本に戻ってきておられるのだ」
「まあ。麗慶お姉さまが・・・それで」



written by sava


 鬼より怖い小姑



「あきらめの悪い人ですね。」
弁慶が窓から外を見下ろして呟いた。
眼下には、平経正。過去に麗慶の婚約者だった男。
経正が麗慶を、武蔵の女ではなく、一人の女性として大切に思っているのは知っている。
彼自身の人柄も悪いものではない。むしろ自分よりよほど『良い人』だろう。
だが、姉を託すには、明らかに役者不足だと弁慶は思った。
「弁慶?どうしたのです?」
窓の外へ目を向けたままの弁慶を、麗慶が不思議そうに見た。
「いえ、なんでもありませんよ。それより九郎は遅いですね。」
「まったく、たかが白虎ごときになにを手間取っているのだか。」
校門の前で白虎が暴れているという、普通にありそうに無い連絡を受けて、九郎が理事長として赴いたのだ。
麗慶も行くといったのに、九郎は危険だからと麗慶を弁慶のもとへ置いて一人で校門へ向かったのだ。
むろん、麗慶のほうがよほど強いのだが。
それでも九郎の気遣いを、麗慶は微笑ましく思った。
けっして顔にはださないが。
「虎を気合でしとめられるのは、姉さんくらいのものでしょう。」
初めからにこやかに手をふって九郎を見送った弁慶が、その時と同じ笑顔で言う。
「しとめたりせずとも、獣ごとき、自然と従わせます。それとも、お前はできないとでも?」
「ふふ。どうでしょうね。」
はたから見れば穏やかに微笑む美しい姉弟。
けれど半径1メートル以内に近寄れば、そのドス黒さに硬直する。
もどってきた九郎は、声を掛けるかどうかたっぷり5分は迷い、同時に振り向いた姉弟に遅い!と怒られるのであった。





written by sou


イラスト sava   文 sava & 総 2006.10.09日記
そわそわ、鬼より怖い小姑 加筆修正