cafe far away
駅前にある、女性に人気のカフェ&バー
厳選されたコーヒー、紅茶に、何種類ものケーキ。
軽食は豊富で本格的。
きっとあなたのお好みの味がみつかります。
さて、あなたのお目当ては?
シャ〜ン
鈴の音が店内に響く。
「いらっしゃい…ああ、将。どうしたんだ?今日はバイトじゃないだろう?」
黒龍が、店のドアから入ってきた将に、不思議そうに言う。
「客だよ、客。」
あれがオーナーズ、などと軽い口調で言う将。
将の後ろには二人の可愛らしい女性が立っていた。
「兄さん!オーナーになんて口きいてるんだよ!」
「将兄…もうちょっと言葉遣いを直したほうがいいよ。」
黒龍に対していつもと変わらぬ口調で答える将に、譲子と譲がいっせいに突っ込む。
「あら、可愛らしいお客様をつれているのね。ようこそ cafe far aweyへ。」
「よ、朔。席あいてっか?」
「カウンターなら空いてるわよ。」
「いらっしゃい、将、お姫様たち。こちらへどうぞ。」
カウンターの中から白龍が言えば、お姫様と呼ばれた譲が頬を染める。
彼女はあまり女性扱いに慣れていないのだ。
一見気障な言葉だが、白龍のおっとりした口調と声で言われると、何故か厭味が無い。
席に着いてメニューを見れば、譲子と譲が歓声をあげた。
「わぁ、ここコーヒーがすごい。マンデリンに…ガテマラまで置いてあるところはじめて見た。」
「紅茶もすごいよ。クィーンアンに、プリンスオブウェールズまである!」
「ケーキ、どうする?」
「うう、チーズケーキが3種類もある…悩む…」
「ミルクレとミルフィーユ、どっちにしよう…」
「サンドイッチも美味しそう…」
「このバケットサンド、すっごく食べたい…」
少し離れた位置でそれを見ていた朔がくすりと笑った。
「ん?どうかしたか?」
将臣が問えば、朔がくすくすと楽しそうに笑う。
「いえ、カウンターに座って、メニューにしか興味を示さない女の子って初めてだから。」
「あ〜。」
「店に来る女の子、ほとんど貴方たち目当てになっちゃってるし?」
「でなきゃ、オーナーズってか。」
「そういうこと。」
「男は、朔目当てだもんな。」
横から、聞きなれた声が割り込んだ。
「ったく、何で来てんだよ。」
「兄さん。」
「臣兄。」
ベストにネクタイ姿の臣が、将を睨む。
「いいじゃねぇか。こいつら、ここのケーキが食べたいってうるさかったんだよ。」
将が肩をすくめる。
「この前、お土産でもらったのがすっごく美味しかったんだ。」
「いいじゃないか。カフェにお茶に来るくらい。」
「そうそう。それともこいつら二人だけで来させたほうが良かったか?」
にやりと将が笑えば、臣が苦虫を噛んだような顔をした。
「どうぞ、好きなだけ食べて?味を評価してもらえるのは、すごくうれしい。」
白龍がにこにこと笑って、譲たちに言う。
「もしかして、貴方が作ってらっしゃるんですか?」
「うん。私と黒龍で作ってるよ。」
「すごぉい。」
譲子と譲が目を輝かせる。
その言葉に、白龍と黒龍が笑みを深くした。
ここはもともと正統派のカフェバー
いつのまにか違う部分が評価されてきて、忙しいのはありがたいけれど、どこか物足りなかったのだ。
自分たちはカフェの運営者であって、モデルではないのだから。
頬を染めた譲をみて、いつもの客かと思いきや、自分たちには反応せずに話す言葉は料理のことばかり。
仕事を評価してくれる客。それも特上の。
自然、白龍も黒龍も、そして朔も笑顔になって話しかけていた。
「おい将、望たちはどうしたんだよ。」
「今日は春日家の法事だとかで留守。」
「…あとでばれたら、うるせぇぞ。」
何がうるさいって、望の知らないうちに、譲を男に会わせたことが。
よりにもよって、女受けする美形たち。
たとえどれほど譲や相手ににその気がなかったとしても。
あの独占欲の塊のような望(のぞむ)が笑って許すわけがない。
「俺には害が無い。」
「てめぇ。」
さらりと言う将に、臣が憤る。
「覚えてろよ。今度お前がシフトのときに、望たちも引き連れてきてやる。」
「やれるものなら?」
将がにやりと笑う。
隣では譲子と譲、そしてオーナーたちが楽しげに会話する声が響いていた。
イラスト sava 文 総 2006.09.19-20日記加筆修正