kissingball
「お、ゾミ!パースっ!」
「えっ?」
突然のぞみの目の前に謎の物体が飛んできた!
ぱしっ!
のぞみは古式武道で鍛えた反射神経で見事にキャッチする。
「お、受け止めたな、感心感心」
投げた本人がけらけら笑いながらのぞみに声をかけた。
「のぞむ君!いきなり人に向かって物を投げないでよ…これ、何?」
のぞみが受け止めたのは丸いボールのようだったが
よく見ればそれは緑の葉で作られており、赤いリボンや木の実が飾られている。
「ん?ほら例のクリスマスパーティの時に飾ろうと思ってな」
「へえ…これ、リース?こういう丸いのもあるんだ。可愛いね」
「ああ。本当はヤドリギで作るらしいんだが手に入らなかったんだよ。で、調べてみたら
常緑樹だったら何でもいいらしいからクリスマスらしくヒイラギで作ってみた」
「って、ええっ!これのぞむ君が作ったの!?すごい、さすがデザイナーの息子」
リースは綺麗に作られていて、売り物と遜色ない出来栄えだった。
つかそういうの投げるなよ、のぞむ(笑)
「ま、初めて作ったにしちゃ結構上手くできたかな。これ、お前も使っていいからな」
「使うって?これでサッカーでもするつもり?」
「お前、あきれた物知らずだな…」
「のぞむ君が雑学王すぎるんだよ。で、何に使うものなの?」
「ふふん。当日になったら教えてやるよ」
「何それ。意地悪」
「親切の間違いだろ」
「どこが…」
「予告しておいてやろう。パーティの夜、お前は涙を流してのぞむ様に感謝するだろう」
「どこのエセ預言者だよ…」
「救世主と呼べよ」
超ご機嫌モードののぞむをのぞみが怪訝そうに眺める。
先程のぞむはこれを自分で作った、と言っていた。
普段の彼は徹頭徹尾人をこき使い、自分で何かするという事はめったにない。
それがわざわざこんな手の込んだ物を作るという事は…
「あ!もしかしてこれで譲ちゃんによくない事するつもりでしょ〜」
「お、気づきやがったな。でも訂正しろ。俺が譲ちゃんにするのはいい事に決まってるだろう」
「それはのぞむ君にとってだけじゃないのかなぁ?」
「うるさい」
のぞむはひょい、とのぞみの手からリースを取り上げる。
「仕方ない。教えといてやる。これはkissingballっていってな」
にやり、とのぞみが笑う。
「クリスマスの時にこれの下に立ってる女性にはキスしていいんだよ」
「…やっぱりそういう事か」
「やっぱりとは何だやっぱりとは」
「大体キスなんていつもしてるじゃない」
「お、それ以上をお望みか?」
「そうじゃなくて!!」
「堂々とキスできる口実ができるなら、俺はクリスマスだろうが大晦日だろうが何だって利用するぜ」
「…譲ちゃんにそれに近づかないようよく言っておくよ」
「そんなことしてみろ。譲子の上にこれ飾るぞ」
ばちばちばちばち。
火花が飛び交う2人。
「のぞむ君のその正直さはある意味もう美徳の域だよね…」
「爪の垢が欲しいか?今なら年末超特価1グラム1万円で売ってやるぞ」
ぷっ、とのぞみが笑う。のぞむも目元を緩める。
「あーあ。もう相変わらずだなあ」
「このくらい大目に見ろよ。2人きりのクリスマスってやつを棒に振るんだからな」
「…わかったよ。ボクは何も聞かなかったことにしとくよ」
「ふふん。本当にそうできるか?」
「どういう意味だよ」
「くくっ。譲子にキスしたくなったら思い出せよって事」
「…!」
「じゃあ、またパーティで会おうな」
気障に手を上げてのぞむは去っていった。
「kissing…ball、か。また厄介なもの作ってくれちゃって…」
のぞみはふう、とため息をつくのだった。
written by sava
クリスマスプレゼント
「ねぇねぇ、譲子。何を作る?」
「うーん。相手はプロだからなぁ。何がいいだろう。いっそ、リースでも作る?」
「パンやクッキーの?」
「そう。」
譲子と譲が本を見ながら話し合う。
ふと、譲が思い出したように言った。
「そういえば、先輩、可愛いリースを作っていたな…」
「のぞむ兄さんが!?」
譲子が驚いて叫ぶ。
それはそうだろう。あののぞむが何かを作るなど。
「…譲へのプレゼントじゃなくて?」
「うん、手土産代わりにっていっていたもの。far awayで飾りに使ってもらうんだって。」
すごいよね。と微笑む譲。
だが譲子は怪訝そうに眉根を寄せた。
「………また、何をたくらんでいるんだ…?」
「誰が?」
きょとんと首をかしげる譲に、譲子はため息をもらした。
あの、年百年中得手勝手で、他人を顎で使う男が、わざわざ手土産を用意して…しかも手作り。
疑うな、というほうが無理なのだが、以外に礼儀正しいところもあるのぞむが手土産を用意することに、譲はまったく疑念を抱いていない。
さすが先輩、と尊敬に眼を輝かせるのを見るたびに、譲子は頭が痛くなる。
譲の眼鏡には特殊なフィルターが付いているとしか思えない。
譲子は自分のことは棚上げして、そう考えた。
「なんでもない。それより譲。今年はプレゼントはどうするんだ?」
「もうすぐ出来上がるよ。兄さんがベスト。先輩はカーティガン。」
「相変わらず器用だな…って、あれ?譲、マフラーを編んでいなかったか?自分のか?」
「ああアレは…友達の。」
「友達?」
「うん。私のを見て、すごくほしがったから。」
うれしそうに微笑む譲をみて、譲子がぴんと来た。
「もしかして、ヒノトさん…?」
「うん。そうだよ。」
「………………」
譲子は何かを言いたかったが、何を言っていいのか分からず押し黙る。
どうして、譲の周りにはああ言うタイプが寄ってくるんだ…?
譲子は自分のことは…以下同文
「まあ……頑張れ。」
「もちろん。譲子こそ、どうするんだ?」
「ああ…私も、もうすぐ用意ができるよ。」
「そっか…」
「クリスマス、楽しみだね。」
「そうだね。」
二人はにこやかに微笑んだ。
written by sou
イラスト sava 文 sava & 総 2006.12.22日記
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