kiss of a vow
「これ…、先輩が作ったんですか…?」
すごいなぁ、と譲がkissingballを見上げる。
「まぁね。これ、なんていうか知ってる?」
にこやかに微笑んで、のぞむが譲に言う。
「名前…?クリスマスリースじゃないんですか?」
「リースの一種だけれど、正式な名前が別にあるんだよ。」
のぞむに言われて、譲が首をかしげる。
少し考えていたあと、譲はゆっくりと首を振った。
「分かりません。なんて言うんです?」
その言葉に、のぞむはくすりと笑うと、ちゅ、と譲にキスをした。
触れるだけに思えた唇はそのまま譲の吐息を奪う。
譲が驚いて瞳を見開くと、のぞむの目が笑みを浮かべた。
ぺろりと唇を舐められて、離れていく綺麗な顔。
いつもと違うキスに、譲は固まったあと、耳まで赤く染め上げた。
「せ、先輩っ!」
「『kissingball』だよ。」
真っ赤になって叫ぶ譲に、のぞむがにこりと笑って言う。
「キス…?」
突然の言葉とのぞむの穏やかな笑顔に、譲の勢いがそがれる。
「そう。この下に立つ女性には、祝福としてキスをするんだ。誰にもキスされないとお嫁にいけないという俗説のおまけもついてる。」
クリスマスの習慣をかなり曲解して説明する。
決して間違ってはいないけれど、明らかに言葉がたりず、正しいとは言いがたい。
「親しい間がらだと、別の意味になるけれどね。」
「別の意味?」
のぞむの説明を聞きながら落ち着いてきた譲は、先輩って博識だなぁと感心しながら、のぞむを見上げる。
のぞむは譲の左手を取ると、そっとその薬指に口付けた。
瞳を閉じてまるで儀式のように恭しくされるキスに、譲が再び瞳を見開く。
「…っ!?」
「恋人同士でキスをすると、結婚の約束をしたことになるんだよ。」
ふわりと微笑んで、のぞむが譲を見つめる。
その瞳の温かさに、譲が見とれた。
「だから、ここ、予約ね。」
ちゅ、と今度は手のひらのほうから薬指の根元に口付けられる。
予約って、何のですか〜〜〜!
問いただしたいのに、のぞむの行動に真っ赤になって固まった譲は、何もいえなかった。
「好きだよ、ゆずちゃん。」
どういう意味で?と訊くことも出来ず、譲はうるさくはねる心臓を落ち着かせるのに必死だった。
ただ、のぞむの優しい眼差しに包まれるように、抱きしめられていた。
その後、案の定、臣がいつものバトルを仕掛けてきて、のぞむと譲はその場所を移動した。
「先輩…、なんであんなもの作ったんですか?」
「ん?」
「その、あれ…」
先ほどののぞむを思い出して、譲は赤くなりながらkissingballを指差した。
「ああ、あれね。もちろん、ゆずちゃんとキスするためv」
「先輩っ!?」
真っ赤になる譲に、もう一度キスして、のぞむが笑う。
「ついでに、あの意地っ張りどもにプレゼントでも、と思ってね。」
「え…?」
くすくすと笑うのぞむの視線をたどれば、譲子とのぞみ。
いつの間に移動したのか、二人はkissingballの近くにいる。
「先輩、それじゃ…」
「結婚の約束になるといいな。」
優しい笑顔で言うのぞむに、譲は感動して飛びついた。
(ああ、もう。先輩はなんて優しいんだ!)
そのまま胸にすりよる譲の髪を優しく撫でながら、のぞむはにやりとのぞみを見て笑った。
その笑みは先ほどと一転して、黒かった。
のぞみの背筋に悪寒が走った。
決して間違ってはいないけれど、正しいとは言いがたいのぞむの言葉。
どこまでが真実かは、神ですら分からない。
彼のみぞ、知る。
written by sou
イラスト sava 文 総 2006.12.29-30日記
Lets kiss under the mistletoe kiss of a vow 加筆修正