kiss you
「先輩をあれの下に連れていけってそういう意味だったんだな」
のぞむの一連の行動を見て譲子が言う。
「ふふん、感謝しろよ。ゾミにもこれの意味は教えてあるからな、いいプレゼントだろ?」
にやり、とのぞむが笑う。
どう答えたらいいのかわからなくて譲子はただ赤い顔でのぞむを睨みつける。
「そういう顔はゾミの前でしろっつの。ほら、帰ってきたようだぜ」
かららん、とドアを開けてのぞみが外から帰ってきた。
とん、とのぞむが指で譲子の背を押す。そして笑いながら譲のところへと去っていった。
「あ〜あったかい。やっぱり夜は冷えるなあ」
のぞみは譲子の動揺も知らず、のほほんと微笑んで譲子へと近づいてきた。
「先輩、外に行ってたんですか?」
「うん、ちょっとね。…ヒノエ君がこれ、譲子ちゃんにって」
リボンのついた小さな包みを譲子に差し出す。
「ヒノエが来たんですか?」
驚いて譲子が言う。
「うん。さっき外に似た人がいたから、もしかしてと思って出てみたんだよ。
中に入って譲子ちゃんに会っていきなよって言ったんだけど…遠慮して帰っちゃったんだよ。ごめんね、引き止めたんだけど」
のぞみが本当にすまなさそうに言うので譲子は困ってしまう。
「はい、これ…、譲子ちゃん?」
のぞみが譲子にプレゼントを渡そうとするが、譲子は受けとろうとしない。
「ええと…ヒノエ君の事だから変な物は入ってないと思うんだけど?」
そういう事じゃありません!!と叫びたいのを堪えて
ぶんぶん、と譲子は頭を振って後ろに下がる。
「譲子ちゃん…どうして。受け取ってあげて?ヒノエ君わざわざ来たんだよ」
のぞみが譲子の手を取ろうとすればその手を後ろに隠してさらに後ずさる。
のぞみもさすがにむっとして意地でもプレゼントを渡そうとする。
そのまま無言の攻防戦はつづいて譲子は壁際まで追いつめられる。
もう下がる場所がなくなって譲子はうつむいた。
「譲子ちゃん。はい、受け取って」
のぞみが譲子にプレゼントを差し出す。
「…先輩は、平気なんですか」
「え?」
「私が他の男の人からプレゼントもらっても、何も感じないんですかっ!」
きっ、と譲子がのぞみを見上げれば、その頭上には
のぞむの作った丸いリースが飾ってあった。
「…あ」
いつの間にか気づかずにリースの下に来てしまっていたのだ。
のぞみはまだ気づいていないようで譲子に言われた言葉に赤くなって言い訳をしている。
「ああ、そういう…こと…。ええと、平気…って訳じゃないんだけど、でも、ヒノエ君は友達だし…」
「先輩」
のぞみの言葉を遮って譲子が言う。
「私は先輩以外の男の人からプレゼントは欲しくないんです」
そして頭上のリースを無言で指差した。それに気づいたのぞみがはっとして固まる。
「…くれますか?」
のぞみと譲子はしばらくそのまま見詰め合う。
真っ直ぐなのぞみの瞳が譲子を射抜く。譲子も視線を逸らさない。
やがて、ふぅ、とのぞみが息をひとつついて上を見上げる。
「ボクのプレゼントは用意してあるんだ…向こうに、ね。…行こうか」
のぞみがいつもの顔に戻って笑って言う。
ああ、もう、この人は!
「先輩っ!」
「え?」
ぐい、と譲子が望の髪を両手でつかむ。
「くれなきゃ、もらい、ます」
高い所にあるのぞみの顔をそのまま髪ごとぎゅっと引き寄せて、背伸びして、
譲子がのぞみにキスをした。
「ゆ、譲子、ちゃん」
「この下に立ってる女性にキスしないと、幸せになれないんですよ。先輩は私が不幸になってもいいんですか?」
「…!これの意味、知ってたの!?」
のぞみが驚いて譲子に言う。
「さっき知りました。…で、どうなんですか?」
かなり省略&曲解だけどと思いながら譲子が言う。
「…参りました。全面降伏です」
のぞみは両手を上にあげて降参のポーズをとる。
それから、やはり少し困った顔で、赤い顔でのぞみを睨みつける譲子に
そっとキスを落とした。
「君に神様の祝福がありますように…」
written by sava
「おお、やったか。」
臣は思わず声を上げた。
やっと、といえるくらい時間をかけて、ようやく触れるだけのキス。
あの分じゃ、注目を浴びていることなんか気付いていねぇな。
臣がくっと笑って隣を見れば、固まったままの将。
「…おい、大丈夫か?」
「あ…ああ…。」
グラスを渡せば一気に煽った。
中身はブランデーの水割りなのだが、将はむせもせずに飲み干した。
「よかったな。」
「………………」
「良かったんだろ?」
「……ああ…」
二人から眼を放さず、将がため息のような声で言う。
いいか悪いかと問われたら、いいにきまっている。
だが、それでも、複雑な思いは消せない。
ずっと温め続けた愛情は、簡単に消せるものではない。
「消す必要なんざ、ねぇだろ?」
臣が穏やかに笑う。
「臣?」
「少しばかり変わるだけだ。」
のぞむに遊ばれているのぞみを見ながら、臣が呟く。
「変わらない部分の方が、多いと思うぜ。」
そう言って笑う臣に、将も頷いた。
「…そうだな…。少なくとも、あの関係はかわらねぇな。」
のぞみをからかうのぞむを叱る譲子と、それをなだめる譲を見て、二人の将臣は小さく笑った。
written by sou
イラスト sava 文 sava & 総 2006.12.30・31日記
Lets kiss under the mistletoe kiss you 加筆修正
おまけ文 07.03.12書き下ろし