ぬいぐるみ
「どうした、麗慶?」
先ほどからじっとサイドボード一点を見て動かない麗慶に、リズヴァーンが不思議そうに言う。
「あ、いえ…」
リズヴァーンに話しかけられると、麗慶がぱっと視線をそらした。
何を見ていたのかとそちらを見れば、赤ん坊くらいの大きさの、リスのぬいぐるみが置いてある。
「?なんでこんなものが?」
見覚えの無いものに、リズヴァーンが首をかしげる。
「掃除をしようとしたら、ここに…」
麗慶も、不思議そうに呟くので、リズヴァーンが手にとって検分する。
「…ん?」
ぬいぐるみのタグを見ればbenkeiの文字が…
「器用なものだ。」
悪戯者が誰か分かり、リズヴァーンがくすりと笑った。
「先生?」
「弁慶が作ったようだが…いるか?」
「え?」
「好きだろう?」
にこりと微笑まれて、麗慶が赤くなる。
「そ、それは…」
「女の子は幾つになっても、ぬいぐるみが好きなのだな。」
女の子といえる年でもないのだが…
麗慶はリズヴァーンの物言いに苦笑しか出ない。
「お前のほうが似合うからな。」
ひょい、とリスのぬいぐるみを麗慶に渡す。
「あの…」
「どうした?」
「本当に、いいのですか?」
おそるおそる麗慶が言えば、リズヴァーンが微笑んだ。
「構わない。弁慶もお前が持つのなら不満はあるまい。」
「あ…りがとうございます。」
ほんのりと頬を染めてぬいぐるみを抱く麗慶を、リズヴァーンが優しい眼差しで見る。
そっとぬいぐるみを抱きかかえる姿が、幼い少女のようであり、また赤子を抱く母のようであり。
そのどちらも可愛らしいと思いながら、リズヴァーンは麗慶を見つめていた。
麗慶がこのぬいぐるみを見ていたのは、可愛いからだけではなかったのだが。
顔だけが人間の姿をした愛くるしいリスなのだが、その顔がリズヴァーンに酷似していたのだ。
リズヴァーンをそのまま幼子にしたような…。
弁慶が作ったと聞き、思わず納得したものの。
(先生の幼いころの写真など見たことは無いはずなのに…いったいどうやって作ったのだか。)
「ああ、それですか。」
「何を元につくったのです。」
麗慶がぬいぐるみを片手に詰め寄れば、弁慶がいつもの笑顔で言った。
「パソコンで、姉さんと、リズ先生の子供をシミュレートしたんですよ。」
「なっ!」
動揺のあまりぬいぐるみを落としかける麗慶に、弁慶がくすりと笑う。
「母親の元へ引き取られて、良かったですね。」
「……弁慶っ!」
真っ赤になって怒鳴る姉を、弁慶は笑って見ていた。
早く、本物を抱く日が来ればいいと思いながら。
written by sou
イラスト sava 文 総 2007.01.10-13日記
ぬいぐるみ 加筆修正
ゆめにじ5000hit祝いに書いてくださったイラストのため、数字がはいっております