「理事長。本日のスケジュールを申しあげます、一度しか言いませんから覚えてください」
「ま、待て今ネクタイを・・・」
「・・・本日は10時から役員会、0時より昼食を兼ねて藤原社長と会合、その後学校へ戻り職員会議に参加していただきます。本日の議題はこの秋行われる東西合同文化祭の・・・」
「待てと言うのに!」

どう見ても主従が逆な源家の朝。

written by sava


 理事長と秘書の朝



「麗慶…その格好はまずいんじゃないか?」
ようやくネクタイを結び終わった九郎が、麗慶の姿を見て言う。
「何か不服でも?シックな黒のスーツじゃないですか。」
「…む、胸が開きすぎだろう!スカートの丈もそんなに短くて…」
お前はどこの風紀委員だ。といいたくなるような言葉を言う九郎。
そんな九郎に、麗慶はクスリと笑った。
「九郎は変わっていますね。男はそれを喜ぶものですが?」
「それが問題だというんだ!不埒な男が寄ってきたらどうする!」
「……………」
「お前が強いのは知っているが、それとこれとは別問題だろう!そんな格好をして、襲われたらどうする。」
(顔を真っ赤にしていう言葉がこれですか。一応心配をしてくれているのでしょうが…まったく可愛らしいことですね。)
麗慶はくすりと笑った。
「襲った男のほうが危ないのは承知しているが、やはりお前も女性なのだから…」
(本当に、一言多いですね。君は。)
手に持っていた書類を置くと、麗慶は九郎に向き直った。
「九郎、ネクタイがゆがんでいますよ?人の格好を言う前に、まず自分の服装を正しなさい。」
ニコリと笑って、九郎のネクタイに手を掛ける麗慶。
その笑みの質を熟知している九郎が思わず後ずさるが、ネクタイを握られつんのめる。

ギュ〜〜〜〜〜!

「しっかりとしましょうね。」
ネクタイを締め付けられ、窒息寸前の九郎。
傍から見れば、麗慶にネクタイを整えてもらって真っ赤になっているようにしか見えない。
「れ…い…」
「ふふ。子供じゃないのですから。着替えくらい自分でできるようにならなくては、ね。」
片手でネクタイをつかみ、片手の人差し指を唇に当て微笑む様は、たおやかで美しい。
が、九郎の眼にはその背後に浮かぶ深遠の闇が映った。
九郎は言葉も無くこくりと頷いた。
「はい、できましたよ。」
一応、ゆがんでいたネクタイをきちんと整えて、麗慶が手を離す。
「本当に、君はいつまでたっても可愛らしいですね。」
『いつまでもガキのままで居るんじゃない。私の手をわずらわせるな』
目を細めて微笑む様は聖母さながらに美しい。
だが、麗慶の言葉が脳内で翻訳される九郎は、魔王もかくやという冷気を感じ取ってしまうのだった。


『キャーvv麗慶様今日も麗しいわぁ!』
『ああ、お姉さまとお呼びしたい!』
『お役目とは言え、九郎様はなんと幸運な方だろう。』
『案外弟ではなく姉を指名したのは、九郎様かもしれんな。』

それだけはありえん。
ドア越しに聞こえてきた使用人の声に、九郎は心の中で呟いた。


私に不服でも?(闇笑) by麗慶





written by sou



イラスト sava  文 sava & 総 2006.09.26-27日記 加筆修正