アメジスト効果
「最近、そればかりだな。」
九郎が麗慶の髪飾りを見て言う。
「問題は無いでしょう。」
「ああ。ずいぶんと高価なものに見えるが…どうかしたのか?」
麗慶が自分で買うとは考えがたい。容姿と家柄に似合わず、彼女は華美すぎるものを、それほど好まない。
嫌いというわけではないが、自分から買おうとはしない。
プレゼントとして貰うことは始終あるが、それを身に着けているのは、珍しい。
気に入れば、1度や2度は着けてみるが、大抵は宝石箱(弁慶などはガラクタ入れと呼ぶ)にしまわれる。
まして、このように高価なものなら、パーティーなどでは使うかもしれないが、日常で愛用するというのは珍しい。
だいたいが、麗慶は、自分たちから送られたものくらいしか使わないのだ。
とはいえ、自分はそういうものに疎いし、それはリズヴァーンも同じ。
自然と、弁慶が贈ったものくらいしか、身に着けないことになる。
「頂いたのですよ。」
「弁慶からか?」
ある意味予想通りの答えに、九郎が聞く。
それに複雑そうな笑みを零して、麗慶が言った。
「先生からです。」
「どの?」
九郎が聞き返したのも無理ないだろう。いままでリズヴァーンが麗慶に送ったものといえば、粗野な花や、自分の撮った写真、絵、時折は可愛らしいお菓子など。
少なくとも、このようなアクセサリーの類を送ったことなど、一度もない。
「先生といったら、リズ先生に決まっているでしょう。」
麗慶の返事に、九郎が動きを止めた。
「………リズ先生?」
「そういっているでしょう。」
呆れたように言いながらも、ほんのりと頬を染める麗慶を、九郎が呆然と見つめる。
「何を阿呆面をさらしているのです。さっさと書類をまとめなさい。」
ぴしゃりと言われ、九郎が仕事を再開した。
麗慶の金の髪の中で、淡いな紫水晶が輝いていた。
つがいの鳥を見ていたら、なぜか溜め息がこぼれた。
「ああ、やはりリズ先生だったんですか。」
「知っていたのか?」
放課後、弁慶に所にきた九郎は、麗慶の髪飾りの話をした。
「他にいないでしょう。姉さんが愛用するような品を贈れる人は。」
愛用できるものを贈るというより、リズヴァーンが贈ったものを、麗慶が愛用するのだが。
2月にもらった山茱萸の花を、いくつか押し花にして、栞を作っているのも知っている。
リズヴァーンが絡むと、麗慶は、中学生も真っ青な乙女系に変わるのだから。
「…そろそろ、覚悟を決めてもらいますかね。」
「弁慶…」
「君は、不満ですか?」
珍しく言葉の意味を理解したらしい九郎に、弁慶が笑顔で言う。
「不満などはない。」
九郎がきっぱりと即答するので、弁慶がおや、と笑う。
「だが…戸惑ってもいる。」
視線をそらして言う九郎に、弁慶が苦笑した。
「そうですか。」
「ああ…。だが、不満はないんだ。」
どちらも厳しく、そして温かかった。
その表し方は異なるが、どちらも自分を慈しんでくれた。
大切な人には変わりない。
「…幸せになってもらえれば、それでいい…と思う。」
「思う…とは、また曖昧ですね。」
九郎がぽつりと言うのを聞き、弁慶がくすくすと笑った。
「それでも…何も変わらないと思いますよ。」
「弁慶?」
「ただ、少しだけ呼び名が変わるだけで。」
僕たちにとってはね、と弁慶が悪戯っぽく笑う。
本人同士はともかく、自分たちにとっては変わらない、どちらも大切な−家族。
そうだな、と微笑む九郎に、弁慶もまた微笑んだ。
ふと、九郎が思い出したように言う。
「そういえば、アメジストはお前たちの誕生石じゃなかったか?」
「ええ。リズ先生のことですから、おそらく知らずに贈ったのでしょうけれど…。」
それでもあの石を選んだあたり、もう運命としかいえないだろう。
そう言って、二人でどうやって追い詰めようかと、画策を始めた。
主に、弁慶が、だが。
それでも、こういう策略は悪くないと、九郎は思った。
written by sou
おまけv
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麗慶の心理状態 阿呆ですか! 私が先生といったらリズ先生以外に誰がいると言うのです! 私がリズ先生からこのようなものを頂くはずがないと、そう言うのですか!? リズ先生は私を子供扱いされることも多いですが、だからといって女性扱いしないわけではありません!! それは、まぁ…大変珍しいことでもありますが… とにかくその阿呆面を止めなさい!! 殴り飛ばしたい衝動に駆られます! リズ先生の可能性を全否定されて、麗慶お怒りモード(笑) |
イラスト(コミック)sava 文 総
2007.05.24-25日記 アメジスト効果 他 加筆修正
背景 十五夜