旅は終わり、そして始まる。 〜譲〜
「ちょっと、譲!春日先輩と旅行に行ったって本当!?」
「なに?じゃぁ、3日も休んだのって、旅行だったの!?」
「どこに行ったのよ。むしろどこまでいったのよ!!」
友人達に詰め寄られて、譲が苦笑する。
「旅行は本当だけど…」
譲が答えればきゃぁ、と歓声をあげる友人達。
「うわぁ、いいな。」
「学校休んでって、親公認よね。流石…」
「公認は前からでしょ。確かもうウェディングドレスを用意したとか…」
「うわ、すごいっ!」
「人の話を聞け!」
好き勝手に話す友人達に、譲が叫んだ後、とす!とそれぞれの頭に手刀を入れる。
「旅行っていっても、兄さんや従兄弟達と一緒の家族旅行だよ。行き先はドイツ。
先輩のお母様のお仕事関係で、ホテルに招待されたんだよ。見聞を広めてこいって…まぁ修学旅行だね。
別に皆が言うような艶っぽいことなんか…なかったと思うし。」
「ドイツか〜いいなぁ!」
「冬のヨーロッパって寒いだけって聞くけど…。寒さが二人の距離を縮めたとvv」
「きゃぁっvv素敵素敵vv」
「だから人の話を聞けってば!!」
クラスメイト達が頬を赤くして言うので、譲が叫ぶ。
「聞いてるわよ。子供達だけで行ったんでしょ?」
「あの春日先輩が、譲と旅行して何もしないわけがないじゃないvv」
「まぁ、他の人が居ても気にしないひとだしね♪」
「だから…」
「おや、何もなかったと?」
「何もって、先輩はいつもどおりだったと思うよ…?」
言われて、譲は旅行中のことをゆっくりと思い出した。
先輩はいつもどおり。
ただ…自分から挨拶のキスを返したのは…初めてで。
あれ以来、先輩は毎朝それをねだるようになっちゃって…
今朝もそうだった…と思い出して、譲がほんのりと赤くなる。
「やっぱりあったんじゃない!」
「何があったのよ!」
「吐け吐け!」
譲の赤い顔を見て、友人たちがきゃわきゃわと譲にじゃれついた。
「だから…違うってば!」
むしろ変わったのは兄の方だと譲は思った。
いつもどおり先輩と喧嘩するけれど、一拍開くというか…。
私が動くのをじっと、待っている…見守っていてくれるような…
『もらいっぱはだめだぞ〜』
お姉さんに言われてようやく自分から行動できるようになった…。
誰かに背中を押してもらわなければ進めないなんて情け無いとは思うけれど。
まだまだ不安は尽きなくて
いろんな人に教えられて、いろんな人に見守られて、ようやくここまで来たから。
少しずつ変わって行く関係に、戸惑わなくはないけれど。
これからもあの人と共にありたいと思う。
ほんのりと赤くなって、少しだけ誇らしげに微笑む譲に、男も女も眼を奪われた。
「…譲、可愛いv」
「ちょ、抱きつくなよ!」
「うふふふふ♪」
「有川さん、綺麗になったよなぁ…」
「もとから綺麗だって…じゃなくて、なんていうか色気が溢れ出てる…」
「ああやっぱり春日先輩と何かあったのか!?」
「高嶺の花は承知してたけど、もう影でも譲ちゃんなどと呼べない…」
「おま、そんな呼び方してたら、呪われるぞ!」
泣き伏し、怯える男子生徒を、それでもひきつけてしまうほどに、譲は柔らかな笑顔で微笑んでいた。
written by sou
イラスト sava 文 総
2007.03.12日記 旅は終わり、そして始まる。加筆修正