パラレル パーティー
「「「「「「カンパ〜イ!」」」」」」
「で、何に対しての乾杯なんだ?」
東の将臣(将)が不思議そうに言う。それでもちゃっかり食べ物はキープ。
「え〜っと、めでたく私たちのサイト『weatherglass』が1周年を迎えたことかな。」
東の譲子が言えば、東の望(のぞみ)も頷いた。
「それで、ボクたちと望くんたちが親戚になって、この都市ができたんだよね。」
「元から親戚だろ。」
西の将臣(臣)が不思議そうに言う。
「俺は、ゆずちゃんがいればどっちでもいいけど。」
ちゅ、といつものセクハラを西の望(のぞむ)がかませば、西の譲が真っ赤になって俯いた。
「せんぱ〜い。」
「ふふ、ゆずちゃんは可愛いねv」
またか、と、呆れてみる将と譲子、ほんのり赤くなるのぞみ。そして、当然攻撃を仕掛ける臣。
「いいかげんに、しやがれっ!」
「やなこった。」
某格闘ゲームも真っ青な動きで、組み手をする二人。
「このセクハラ男が!」
「ハッ。挨拶して何が悪い!」
「んな、挨拶があるか!」
「あるだろうが。」
「ここは日本だ。」
「うちは欧米風。」
「嘘ぬかせ!」
「嘘じゃないさ。」
「譲をまきこむな!」
「譲ちゃんにやらなくて、誰にやる。」
「親父にでもやってろ!」
「冗談。あれは譲ちゃん限定。」
「…よくもまぁ、あれだけ攻防戦を繰り広げながら、あんなに口が回るよなぁ。」
譲子が呆れを通り越して感心して言った。
「臣も、毎度よくやるよなぁ。いいかげん、あきらめりゃいいのに。」
「…望(のぞむ)くんも臣くんも、すごい。」
将が呆れて笑い、のぞみは感嘆した。
何がすごいって、譲が飾りつけた花とか、リボンとか、譲と譲子が作った料理とかセッティングした食器その他もろもろ。
それらをただのひとつも、触れもせず、かすりもせずに、格闘しているあたりが。
譲(と譲子)を泣かせない。
これはのぞむと臣の喧嘩の、絶対条件だった。
喧嘩の原因も譲なら、それを止めるのも譲である。
「先輩、兄さん。そろそろやめないと、メインのビーフシチュープティング、さめてしまいますよ。」
力作なんですから、と譲が言えば、二人の動きがぴたりと止まる。
「お〜。」
「了解。」
腕を回し、体をほぐしながら元の位置に戻る二人。
「…すごいね、譲ちゃん。」
「別にすごくないですよ。二人ともじゃれているだけなんですから。」
のぞみに言われて、譲が苦笑する。
それを見て、譲子が呆れてため息をついた。
「譲って、自覚しないよな。」
「……お前も似たようなもんだろ。」
将に言われて、譲子が怪訝そうに兄を見上げた。
「なにがだよ。」
「そのまんま。」
一向に進展しない幼馴染の従兄弟と義理の妹の関係に、こちらも深いため息をつくのだった。
将と臣
「よ。」
「臣。」
のぞむとの喧嘩に飽きたのか、臣が将の隣に来た。
「そっちも、苦労してそうだな。」
「お前もな。あ〜、のぞみにのぞむ位の甲斐性があればなぁ。」
「無駄だと思うぜ。譲と譲子は、その点はそっくりだからな。」
「………気付かないってか。」
将の言葉に、臣がこくりと頷く。
「のぞむにしたって、理解されてないんじゃ、甲斐性があるとはいえねーだろ。」
「それもそうだな。」
「何、いまさらなこと気にしてんだよ。何かあったのか?」
臣に問われて、将が眉根を寄せた。将がこんな顔をするのは、非常に珍しい。
「…東のはずれにある、私学、知ってっか?」
「ああ、あのおぼっちゃま高校。」
臣は学力レベルも、授業料も高いことで有名な私立高校を思い浮かべた。
「そこのタラシが、譲子を気にいったらしくてな。」
「………珍しいな。そういうのは、譲子自身が撃退してるだろ?」
可愛い、優しい、料理上手と三拍子そろった東の天使(笑)譲子。
今までにも、何度か言い寄られたことはある。だが、見かけに反してきっぱりさっぱりした気性の譲子が、自ら丁重にお断りしてきたはずだ。
「どういうわけか、お友達してるんだよ。まぁ見た限り、本当に友達なようだが…。」
「いつ変わるかわからんってか?」
「譲子だからな。いつ狙われてもおかしくねぇだろ。けど俺はのぞみ以外のヤツに渡す気はないぜ。」
事実とは言え、兄馬鹿な言葉を吐く将。西の妖精(笑)を妹に持つ臣としても、他人事ではない。
「あ〜、それに関しては、俺も同感。何だかんだといっても、あいつが一番譲を大事にしてくれてるからな。」
「それに、さっさとくっついてくれないと。こっちの踏ん切りがつかねぇっての。」
「………ごくろ〜さん。」
そっちが本音か、と臣は思ったが、それでも義妹の幸せを望んで身を引いている将にいたわりの言葉をかけた。
臣が苦笑してグラスを差し出せば、将がそれに自分のグラスを合わせた。
グラスがキンと、小気味の良い音を立てた。
二人の将臣は、とてもよく似ていた。
ただ一点を除いて。
字(形)は同じでも読み方(中身)が違う
「望くん、すごいね。いったいどうやればあんな動きができるのかな。」
「根性!」
譲と譲子がデザートの仕上げ(切り分け)に入ったので、手持ち無沙汰なのぞむとのぞみが珍しく普通に(笑)会話をしていた。
「根性って…」
「ゆずちゃんを泣かせるようなまね、できないだろ。その辺は臣もわかってるからな。動きやすい。」
のぞみが苦笑すれば、のぞむがにやりと笑う。
「ま、俺はお前と違って、妙な遠慮なんかしないからな。」
「のぞむくん…」
のぞみがそれこそ珍しく低い声を出してのぞむを睨む。が、そんなもの、のぞむにしてみれば蚊の羽音のようなものだ。
つまり、一打ちで、叩き潰せてしまう。
「はっ。遠慮してるうちに、鳶に油揚げをかっさらわれた、じゃ、将だって浮かばれないぜ。」
「…将臣君はまだ死んでないよ。」
叩き潰されたのぞみが憮然として言うが、のぞむは気にせず話を続けた。
「いいのかよ、譲子にタラシなんか近づけて。」
「彼はただの友達だよ。って、なんでのぞむくんが知ってるのさ!?」
「情報にはぬかりございませんってな。西側のヤツは、俺のことを知ってるから譲ちゃんには近寄らないが、東側で譲子に振られたやつが、そっくりな譲ちゃんを見つけて言い寄ってくるパターンが多いんだよ。災いの目はさっさとつぶすに限る。」
望(のぞむ)と譲は相思相愛、西高のだれもが知っている。分かっていないのは譲だけ。
この二人は、正式に恋人として付き合っていないだけなのだ。というより、周りにとっては、恥ずかしがりやな譲が無駄に否定しているようにしか見えない。
「だいたい、譲子に振られたからって、譲に言い寄る神経が気に入らない。」
「あ、それは分かる。なんか、馬鹿にしてるよね。」
これにはのぞみも同意した。
もちろん、のぞむが言った逆のパターンもあるからだ。
譲に惚れてものぞむが怖くて手がだせない。そっくりな譲子を見つけて口説こうとする男。
何度か見たことがあるが、それはむかむかとした。
こちらはあっさりきっぱり譲子がお断りしていたが。
どうして譲がらみなのが分かるかというと、自分が傍にいったらその男が怯えたからだ。
『春日っ、どうしてここにっ、いや、なんでもない!』などと捨て台詞を吐かれれば、事情はおのずと知れようもの。
それを聞いたのぞみが無意識に冷ややかな笑みを浮かべてしまったため、その男は翌日から学校へ行けなくなったそうだ。
もっともそれを知ったのは、のぞみではなくのぞむだが。
「譲子ちゃんが好きっていうならともかく、代替扱いだなんて。」
譲子ちゃんと譲ちゃんは違うのに。とのぞみが憤る。
その通りとのぞむも頷いた。
この二人、実の母でさえ間違えかけていたのに、幼いころから譲と譲子を間違えたことはただの一度もないのだ。
「もっとも俺は、そいつが譲ちゃんを好きだとしても、認めないが?」
「それは………ボクだって…」
二人の望は似ているのは容姿だけ。中身は全然似ていない。
だが、ただ一点に関してだけは、まったく同じ反応を示すのだった。
似て非なるもの
「これが、兄さんたち。」
「こっちが先輩たち。」
「譲〜、ソースどのくらいかける?」
「あ、もうちょっと。」
「甘党。」
「自分だって。」
くすくすと笑いながらケーキを盛り付ける譲と譲子。その姿はとても愛らしい。
「ゆずは、いいなぁ。望兄さんに愛されてて。」
その言葉に固まる譲。
「な、何言ってるんだよ。それは譲子だろ!のぞみくんにあんなに慕われてるのに。」
「いや、それありえないから。」
手を振る譲子に、譲が呆れた視線を投げた。
「あんなに可愛がられてるくせに。」
「ゆずのとは、違うよ。従兄妹で幼馴染の妹分だもん。」
「いや、それ私のセリフだから。」
譲子の言葉に、譲が即答する。
「はっきり妹って言われたことあるし。幼馴染として可愛がってはくれてるけど…」
「妹だなんて、子供のころの話だろ。いまは違うって。」
お互い盛り付けの手は休めずに、口々に言い合う。
「ゆず子こそ、妹だなんていわれたことないだろ?なんでそんな思い込みするんだよ。」
「…だって、先輩…。私なんかじゃつり合わないよ。」
「いや、それありえないから。一般的にも、のぞみくん的にも。」
譲が先ほどの譲子と同じ言葉を返した。
だが、譲子はその言葉に首を振った後、譲を睨むような目で見た。
「譲こそ、なんでそんな思い込みしてるんだよ。あんなにキスとかされてて。」
「あれは、先輩の挨拶だよ。ちっちゃいころからしてるもん。現に先輩のお母様とかもしてきたよ。」
「…望兄にも?」
「え?……そういえば、お母様が先輩にしてるとこは見たこと無いなぁ。」
偶然?と首をかしげる譲に、譲子がため息をついた。
のぞむは、母親によくにた性格なのだ。つまり、のぞむをからかうつもりで、のぞむの母が譲子にキスをした、というところだろう。
「望兄さん…苦労するな…」
でもまぁ、自業自得かな?と譲子は切り捨てた。
「用意できた?」
「運ぼうか。」
「「先輩。」」
譲子と譲の声がハモる。同時に後ろを振り向いて、それぞれの「先輩」に返事をする。
「できましたよ。いま仕上げたところです。」
「お願いします。こっちが先輩たち用です。」
後ろから声を掛けられたのに、その良く似た声でさえ、正確に判別する二人。
譲子と譲はどこまでも似ていた。
けれど、確かに違うのだ。
似ているところを愛しみ、違うところに恋した二人の望
似ているところも、違うところも同じように愛おしんでいる二人の将臣。
似ているところも、違うところも理解して、愛し、恋した譲子と譲。
一歩間違えば泥沼劇場。
けれどこのバランスが崩れたことは一度もなく。
東西の有川家、春日家は今日もなかよし♪
sava様一周年おめでとうございますv & Wパラレル始動記念♪
イラストsava 文 総
2006.09.18日記 「祝『weatherglass』1周年v パラレルパーティー」
「将と臣」「字(形)は一緒でも読み方(中身)が違う」「似て非なるもの」加筆修正