楽園の住人 act1:譲子 赤
将臣から受け取ったリンゴを抱えて台所へ向かう譲子。
平静を保って何事も無かったようにのぞみの部屋からでてドアを閉め階段を降りて・・・
春日家のリビングの扉を開けて・・・
そこで気力が尽きた。
壁によりかかりへたへたと座り込んでしまう。
(ああ・・・びっくりした・・・まだ動悸が止まらない・・・)
そっと自分の唇に触れる。
唇はまだ少し濡れていて、譲子はあわてて拭う。
(兄さんに気づかれたかな・・・)
頭の中がまだ痺れたようになっている。
(さっき・・・いつもの先輩じゃないみたいだった)
強い力で押さえられて、身動きも出来なかった。
いつも優しいのぞみにこんな力があったなんて、と譲子は驚いたのだ。
初めてのキス。
(そ、そうだ・・・私、先輩と・・・キス・・・しちゃったんだ・・・)
火がついたように全身が熱くなる。
自分がしたような子供のキスじゃない。
貪るように。
いとおしむように。
何度も。
『君が欲しい』
と言っているような、キス。
嬉しくない、訳じゃない。
ずっと好きで、大好きで、妹のままでいたくなかった。
でも、
怖かった。
先輩が、じゃなく、自分が。キスをされて、動けなくて。
でも、それでいいと。
もっと、触れてほしいと、思う自分を、初めて知った。
もう、先輩も、自分も、子供じゃない。
分かっていたばずなのに。
もしもあのまま・・・先輩がやめなかったら・・・
どうなっていたのだろう。
どきどきと鳴る心臓を押さえながら譲子は立ち上がった。
(リンゴ・・・早く切って持っていかなきゃ兄さんが変に思うよな)
台所へ行きまな板を出して、リンゴを袋から出す。
「きれい・・・」
真っ赤な色。
「青は進め、黄色は注意、赤は・・・止まれ、なんて、ね」
まだ、早いのかもしれない。
まだ、もう少しだけ・・・待っていてほしい。
「大好き・・・なのに、わがままかな・・・」
はた、と譲子のリンゴをむく手が止まる。
「!・・・駄目だ!ずるい!先輩ってば、何にも言ってないじゃないか!」
君が好きだ、とか、愛してる、とか何一つ、のぞみが言っていない事に気づく。
そして、自分も、何ものぞみに伝えていない。
「・・・やっぱり、先輩寝ぼけてたのかな・・・?」
止まってしまった手をまた動かしながら言ってみるが、身体は「NO」と答えを出している。
言葉より何より、のぞみの熱が、力が、物語っていたから。
解りすぎるほど解ってしまったから。
でも、もう少し。
「先輩・・・リンゴ摩り下ろしたら食べられるかな」
のぞみの分のリンゴを用意する。
あともう少しだけ、このままの関係でもいいのかもしれない。
そんな事を思ったのは、初めてだった。
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キスによるボディランゲージ。言葉より伝わるものに譲子ちゃん、戸惑っています。
しかしそれにしてもファーストキスがディープちゅーってどうだろう(苦笑)のぞみくんてば・・・
楽園とっぷ
おまけもすべていただくよくばりな私。譲子ちゃん、可愛いv これぞ思春期の女の子!
sava様本当にありがとうございますvv
06.11.24 総
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楽園の住人 act2:将臣 door
「よっ・・・と、お邪魔します、てか」
将臣が春日家のドアを開ける。
玄関にはのぞみの靴の隣に見慣れた小さな靴がきちんと揃えられて並んでいた。
「お。もう来てるな。えらいえらい」
見舞いのリンゴが入った袋を持って、将臣はのぞみの部屋がある2階へと階段を上がっていった。
部屋に入ろうとした時に、声が、した。
「せっ・・・先輩がっ・・・キ、キスしたら起きるって言った、から・・・し、してみました!」
ぴた、と、ドアノブを持つ手を止める。
(譲子・・・。お前、それはマズイぜ。お前男ってものを分かってねえ・・・)
案の定、その後部屋の中から聞こえてくるのは紛れもなく
のぞみが理性を飛ばしたに違いない音で。
いつかこういう日が来るとは思っていた。というかあまりに遅いくらいだ。
のぞみが訳の分からない理由で譲子の想いから逃げていなければ、とっくの昔にこの2人はこうなっていただろう。
(いい、機会なのかもな)
と頭のどこかでは冷静な自分がいる。
だがそれと同時に、今すぐこのドアを蹴破ってのぞみを殴りたい衝動が、あった。
将臣はぐっ、と拳を握り締めた。
のぞみは自分の親友で、従兄弟で、幼馴染で、誰よりも信頼している奴だ。
そしてのぞみが密かに譲子の事をずっと想い続けている事も、知っている。
将臣自身も譲子を幸せにできるのはのぞみしかいない、と思っていた。
なのに。
許せない、と思う自分がいるのも確かだった。
将臣は自分の感情を持て余す。
俺達はいつも3人だった。
子供の頃、3人で一日中遊び呆けて家に帰るとき、さよなら、と淋しそうに言うはのぞみだった。
俺と譲子は兄妹で同じ家に帰る。俺たち3人を隔てるドアは俺達と、のぞみの間にあった。
いつかこのラインが変わると、覚悟はしていた。
入り込めないラインが、いつか引かれると。
俺と、譲子の間に。
そして、今、ドアの外側にいるのは、・・・自分だ。
(・・・帰るか)
ここで立ち聞きってのもいい趣味じゃねえよな、と将臣が踵を返しかけた時、のぞみの部屋の中から譲子の声が聞こえた。
「先輩っ!!!こ、・・・ここで寝ますかっ!?」
ごん、と将臣が壁に頭をぶつける。
(あーあ、・・・あのバカ)
「せーんぱーいーっ。重いー。よいしょっ、と」
どさ、と譲子がのぞみをどかす音が聞こえる。
部屋の中の光景が見えるようで将臣が苦笑する。
「ああ・・・寝ちゃった」
(おい譲子・・・騙されるなよ。この状況で寝れる男はいねぇよ・・・あーあ)
くくっ、と忍び笑いをかみ殺す。
まだ、なのかもしれない。
もう少し3人で、仲良しごっこを続けられるのかもしれない。
「ごっこって年でもねえけどな・・・」
「起きて下さいっ!お薬飲まなきゃ駄目です!」
部屋からは譲子が悪戦苦闘している声がする。
「先輩!先輩ってば!」
長引けば、長引くほど、辛い思いをするのかもしれない。
ここで、ラインを引くのが、一番なのかもしれない。
離れたい。
離れたくない。
渡したい。
渡したくない。
でも。
がちゃり
「何だ、寝てんのか?」
自分でもどうしたいのか解らないまま、
将臣はドアを開けた。
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のぞみをけしかけたりしてるけど、将臣もまだ大人じゃないと思うんですよ。
譲子に対する未練も、まだまだ絶対あると思います。
楽園とっぷ
おまけもすべていただくよくばりな私。将はやっぱりいい男vv
sava様本当にありがとうございますvv
06.11.24 総
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楽園の住人 act3:のぞみ 独白
熱が、子供の頃の夢を連れて来る。
子供の頃、眠るのが怖かった。
・・・眠ったら、もう2度と目を覚ます事がないんじゃないかと。
何度も入院したり、退院したり、熱をだしたり、そういう事を繰り返してばかりだった子供の頃
ぼんやりとした死の予感が絶えず付きまとっていた。
そしていつか出した高熱の最中に聞いてしまった言葉がその予感を確信に変える。
『この子は18まで生きられないかもしれない・・・』
今となってはそれが誰の言葉だったのか思い出せないけれど、
子供のボクにはその『18』という数字だけが妙に現実として認識できた。
『・・・ボクは大人になれないのかもしれない』
ぼかり
「のぞみ!そんなこと言うな!」
「のぞみくん、死んだら、やだよ・・・」
お見舞いに来てくれた将臣くんと譲子ちゃんに、弱気になって、ふとそう言ったら
将臣くんには思いっきり頭を殴られて、譲子ちゃんには泣かれてしまった。
・・・ああ、これは、夢だな、と思う。
譲子ちゃんがまだ小さくてボクの事を名前で呼んでくれていた頃の。
「まさおみくん・・・痛いよ」
殴ったのは将臣くんの方なのに、将臣くんの方が痛そうな真っ赤な顔をしている。
「のぞみくん、そんなこと言っちゃやだよ・・・ゆず、のぞみくん大好きなのに、いなくなっちゃ、こまるよ」
譲子ちゃんはぼろぼろと大粒の涙をこぼしてる。ああ、譲子ちゃんを泣かせちゃった・・・
「ごめん、ね、ゆずるこちゃん、泣かないで・・・でもボクがいなくなってもまさおみくんがいるからさみしくないでしょ?」
「お兄ちゃんだけじゃやだ!ゆず、のぞみくんも一緒じゃなきゃやだよ・・・」
将臣くんが、わーん、と泣きだした譲子ちゃんの頭をなでる。
「ゆず、俺たちはぜったいずっと一緒だから大丈夫だ。泣くな」
「もっ・・・もしも、のぞみくんが死んじゃったら、ううっ、・・・ゆずもいっしょに死んじゃうんだからね!」
「ゆずるこちゃん、ダメだよ。そしたらまさおみくんがひとりになっちゃうよ」
譲子ちゃんの言葉にびっくりしてそう言った。
「だっ・・・だったら約束して。ひっく・・・ぜったいぜったい死なないって」
「・・・そしたら泣きやむ?」
「ひっく・・うう。・・うん」
「じゃ・・・約束。・・・がんばる」
「がんばる、じゃダメ!ぜったいぜったい、地球がこわれても、宇宙がなくなっても、死んだりしないって、約束して!」
「ゆずるこちゃん、それはむりだよ・・・」
困ってしまったボクに、将臣くんが真面目に言う。
「むりじゃねえよ。俺が保証する。のぞみ。お前はぜったい死なない」
「・・・まさおみくん・・・」
「世界が壊れても?」
「ああ」
「宇宙がなくなっても?」
「絶対だ」
誰も言ってくれなかった言葉。誰かに言って欲しかった言葉。
「俺たちはずっとずっと一緒だ」
「ゆっ、ゆず、もしものぞみくんが死んじゃったらって考えただけでこんなにかなしくなっちゃうのに、
もしほんとにのぞみくんが、しっ、死んじゃったら・・・きっとほんとにかなしくて死んじゃうよ」
「・・・ゆずるこちゃん」
「だ、だから、やっ、やくそく・・・して」
「・・・うん、するよ。指きり、ね?」
右手の小指は将臣君、左手の小指は譲子ちゃんと。
ゆーびきりげんまん、うそついたらはりせんぼんのーます・・・・
そこで、目が覚めた。
枕元の時計が時を刻む音が聞こえる。今、何時だろう・・・
まだ熱は下がっていないようで視界がぼんやりする。・・・ボクにとっては見慣れた世界。
時計とボクしかいないような静かな部屋。
閉じられた世界に色をつけてくれたのは隣の幼馴染達。
将臣君はガキ大将で、いつも泥だらけのままやってきて譲子ちゃんに怒られていたけれど
いつもお日様の匂いがして、将臣君が来ると部屋の中にボクだけの太陽が来たようだった。
譲子ちゃんはお花やどんぐりや、その時々の外の物を届けてくれた。
そして、大事な約束を、くれた。
2人とも、失えない、大事な人。
・・・なのに。
時は止まってはくれない。
いつからか、ボクや将臣君の身体は樹が枝を伸ばすように大きくなっていった。
そして譲子ちゃんは花が咲いたように綺麗になっていった
譲子ちゃんの笑顔も、仕草も、まぶしいばかりで。
ボクはただ、戸惑うばかりで。
もしもボクがもっと丈夫な身体をもっていたならば。
・・・もしも将臣君と譲子ちゃんが血の繋がらない兄妹だと知らなければ。
・・・もしもボクと将臣君が親友でなかったならば。
もしも将臣君も譲子ちゃんを好きなのだと知らなければ。
本当はずっと、傍にいて欲しくて。・・・こんなにも好きなのに。
「もしも」が多すぎて、ボクの手はいつも彼女に届かない。
もしも、ボクが18を超えられたら・・・
伝えることができるのだろうか?
でも、もしも?
思考はそこで途絶えた。・・・また眠ってしまったらしい。
どのくらい眠ったのだろう。ふいに、ふわ、と暖かいものが頬に当たるのを感じた。
何だろう・・・と思って目を開けてみる。
そして、今の譲子ちゃんと目が合った。
「ゆずるこ・・・ちゃん?」
これも夢の続きなのかなあ。
声をかけたら、譲子ちゃんの顔が一気に真っ赤になった。
「せっ・・・先輩がっ・・・キ、キスしたら起きるって言った、から・・・し、してみました!」
譲子ちゃんが・・・ボクに・・・?
今のは・・・譲子ちゃんの・・・
キス?
ばちん、と頭の奥で何かがはじけた。
手を伸ばし、譲子ちゃんの腕を捕まえる。この感触は夢じゃない。
もう、止められなかった。
欲望のままに、そのまま譲子ちゃんをベッドに引き入れ、口付けた。
「んんっ・・・ん・・・」
譲子ちゃんは、抵抗しなかった。ただ身体を硬くしてボクのするままになっていた。
柔らかい唇の感触に眩暈がする。もっと、もっと・・・もっと。
ああ、何やってるんだ・・・こんな事して、譲子ちゃんに嫌われてしまったら・・・と頭では思うのに止める事ができない。
「はっ・・はあっ、せんぱ・・・ん。んんっ」
拒絶の声を聞きたくなくて、貪るように唇を奪う。
なのに、譲子ちゃんは、力を抜いてボクに身体を預けてくれた。
譲子、ちゃん・・・
首筋に唇を這わせる。譲子ちゃんは学校帰りにそのままボクの家に寄ってくれたようでまだ制服のままだった。
制服の襟元からはふわりと、学校と、
将臣君の家の匂いが、した。
・・・将臣、君・・・
ボクだけの、ものじゃ、ない。
譲子ちゃんを抱く手を、止めた。
「・・・せん・・・ぱい?」
「・・・」
「先輩っ!!!こ、・・・ここで寝ますかっ!?」
ごめん。譲子ちゃん、寝たふり・・・するから、気づかないで。
「ああ・・・寝ちゃった」
それでも譲子ちゃんはボクに布団をかけてとんとん、と背中を優しく叩いてくれる。
そんなに優しく・・・しないで。
『この子は18まで生きられないかもしれない・・・』
消えない呪縛が、ある。
『俺たちはずっとずっと一緒だ』
破れない約束が、ある。
まだ。
「何だ、寝てんのか?」
聞きなれた、声がした。
「起きろ、狸」
「どうせならいくとこまでいっちまえばいいのに。あれじゃ譲子も気の毒だ」
「嘘じゃねえよ。俺は妹の恋路に一々目くじら立てるような心の狭い兄じゃねぇよ」
将臣君の涼しい顔を見ていたら段々憎たらしくなってきた。こっちがどんな思いで止めたと思ってるんだろう。
・・・また熱が上がってきたのかな。思考がうまく定まらない。
「ねえ、将臣君、答えてよ。譲子ちゃんは妹じゃないだろ?」
普段なら絶対に聞かない事をきいてしまう。・・・聞かなくても解っている事なのに。
「もしも、譲子が俺を想っているというのなら、誰にも渡したりしねぇよ」
ねえ、将臣君、自分で知ってるの?
そう言った君がどんな顔しているのか。その真剣な眼差しを。
譲子ちゃんを見る時の君の優しい顔、困ったような顔。・・・バレバレだよ。
たぶん、ボクも同じ顔をして譲子ちゃんを見ているだろうから。
なのに、全部押し殺して、言うんだね。
「好きなら好きって言っちまえよ。だいたいお前は昔から素直じゃないからな・・・」
「素直じゃないのは将臣君の方じゃないか」
むかついたから、キスしてやった。
「・・・お裾分け、だよ!」
びっくりしてる。ざまあみろ、だ。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
のぞみに語ってもらいました。
将臣に対してはすごくやんちゃだと思います。キスは・・・どうかと思うけど(笑)
まあのぞみのオリジナルは望美ちゃんですからこの2人だと思えば違和感も・・・ない・・・か、な・・
それにしても、のぞみ、よく人に殴られてるよなあ。いじられキャラ。
楽園とっぷ
おまけもすべていただくよくばりな私。のぞみはいじられキャラだから可愛いんですよv
sava様本当にありがとうございますvv
06.11.24 総