謎の生物部







「でも、何でカエルなんですかね。」
「蛙の面に水だから。」
生物部の展示を用意しながら、弁慶が言えば、のぞみがさらっともらした。
「ああ、なるほど。たしかにのぞみくんは打たれ強いですからね。」
「いやだな。ボクは目の前の誰かほど、無関心でも不感症でもありませんよ。」
「冷淡、というのはあるでしょう。いったいどれだけの女生徒を泣かせました?」
「どこかの教師ほどではありませんよ。優しげな笑みに騙される人の多さときたら。」
「騙したことなどありませんが。本命をすげなく泣かせることも、ありませんし。」
ゴゴゴゴゴ
燃え上がる闘気と裏腹に、辺りいったいに広がる冷気。
黒さがほとばしる瘴気を感じて、生物部員達が固まる。
「か、春日副会長が…」
「あああ、西高の呪いか!?」

のぞみを呼びにきた生徒会役員の呟きを拾うものは、東高にはいなかった。
文字通り人外魔境の域に達した、西高の誰かさんをのぞいては。
本当の呪いは、これから始まる…かもしれない。








「弁慶先生!白眼!白眼むいてますぅ!!」
生物部兼手芸部兼呪術研究会のメンバーで弁慶ファンの生徒が叫ぶ。

「春日副会長!でてる、何かがでてます!」
こちらはこちらで生徒会執行部役員が青い顔で言う。

「先生!仕込むの苦労したんですから!」
「副会長!部の備品を破壊しないでください!」
生徒達に止められて、二人は同時に笑顔になった。

「ああ、失礼、つい力がはいってしまって。」
「御免ね、うっかり力がはいりすぎちゃった。大人気ないことを言う人がいるから。」
「さしてない握力を誇示しなくても良いでしょうに。」
「生徒相手に本気で喧嘩を売るなどいい年した大人のすることとも思えませんが。」
「一人前に扱って差し上げようと努力しているだけですよ。
まぁ、半人前の自覚があるのならば、無理を強いるのも酷でしょうね。」
再びほとばしりかけた瘴気に、周りの生徒が焦る。

「副会長!議会が始まります!!」
「先生!最終確認お願いします!」

「「わかりました。」」

穏やかな笑顔を浮かべてそれぞれ呼ばれたほうへと進む。
こんなときまで息が合ってしまう似たもの同志。
「…同族嫌悪とは、よく言ったものだよな…」
生徒の漏らした言葉を拾って、弁慶はさわやかに微笑んだ。
「この蛙の実践がまだでしたね。」

その生徒がどうなったのかは、蛙だけが知っている。





written by sou



イラスト sava  文 総 07.02.20 書き下ろし