花と虫
「久しぶりだなタラシ。まだ生きてたのかよ。」
「てめぇもな、スケコマシ。なんでこっちにいるんだよ。」
ここは東町のはずれ。軍茶利学園大学付属高校のすぐ近く。
そっくりな美貌が互いを睨みつける。
その怒りの顔さえ、美しい。
「きたくて来たわけじゃねぇよ。次の交流会議の下見だ。」
「なんでお前が?」
よくも悪くもそっくりで、お互い理解している…分かってしまう二人。
それゆえヒノエが怪訝そうに言った。
交流会議
定期的に朱雀女学院と軍茶利学園大学付属高校が行う生徒会同士の交流会議だ。
それが今回はこちらで行われるのは知っている。
だが、なんでヒノトがわざわざ下見なんて面倒なまねを?
こいつのためなら、いくらでも働きたがる女生徒がいるだろうに。
「……敦美が役員だろうが。」
ぼそりとヒノトが呟いた。
「敦美…ああ、あの敦盛の妹姫か。」
由緒正しい女学院にふさわしい、物静かでたおやかな大和撫子。
この軍茶利学園にも、ファンは多数いる。
その敦美が生徒会役員になってから、軍茶利学園の生徒会選挙はものすごい競争率になった。
役員になれば、高嶺の花と言葉を交わすことができる。
たとえ会話することができなくても、間近でその姿を見るだけでもいい。
そんな希少な機会にありつこうとした男子生徒が続出したのだ。
「なるほど、あの麗しい姫君のためなら、働きがいもあるってか。」
「美しくも繊細な紫蘭の花。大切な私の花に、害虫がよらないようにしておかないとな。」
「だったら、まずてめぇが消えろ。一番の害虫が。」
「お前を抹消するのが先だな。お前が近寄ると花の色が悪くなる。」
「麗しい花に引き寄せられるのは、蝶の本能だろう。」
「誰が蝶だよ。蛾の間違いだろうが。」
ゴゴゴゴゴッ
煙が立ち上るかのごとく、双方から、再び黒い気配が滲み出る。
どこまでも似ているがゆえに、お互い自分の嫌なところまで目に付いてしまう。
それゆえこの二人はよると触るといがみ合いが始まるのだ。
本人達にとっては軽い口げんかの延長だとしても、瘴気耐性をもたない一般市民には立派な毒。
あまりの黒さに、声を掛けたくても掛けられない男女が多数、二人の口論の行く末を見守っていた。
written by sou
イラスト sava 文 総 2006.12.07日記
この2人 花と虫 加筆修正