母曰く  



「ふ〜ん、ずいぶんと、」
のぞみの母が感心したように息子の姿をしみじみと眺める。

(男らしくなったものね)

のぞみは本人も気にしているが女顔で身体の線も細い。
去年も紋付を着たものの、どう見ても男装の麗人、
宝塚のトップスターの退団姿のようにしか見えなかったのだ。
それが今年は…

(去年のクリスマス前後からかしらね。急に男の顔になっちゃって。まあ理由は…分かりきってるけど)

のぞみの隣にいる可愛らしい着物姿の女の子に視線をうつす。
2人は仲睦まじく笑ったり話したりしている。

(ついにのぞみも覚悟決めたのかしらね。全く遅いんだから!
 分かってんのかしら。譲子ちゃん16になったのよ。結婚できる年なんだから!
 …のぞみはまだ17か、チッ。法律の壁があるわね。
 既成事実だけでもさっさと作れっつのヘタレ息子。 頑張んなさいよ!)

と、のぞみ母は握りこぶしを作って応援するのであった。



written by sava






 母達の思惑 



「うふふ。どんなのがよいかしらv」
「あら、お義姉さん。こんなところまでお仕事なの?」
 のぞむ母がスケッチブックを取り出しているのを、不思議そうにのぞみ母が覗き込む。
「目の前に、よいモデル達がいるんですものv そうそう、のぞみ君はどれがよいと思う?」
 のぞむ母が差し出したページを見れば、そこには白、グレーを基調とした見事な燕尾服。もしくは礼服。
「…まだ、早くない?」
「あら、周りから固めていくのも一つの手よ!」
「なるほど。」
 こくりと頷くのぞみ母。
 この二人、容姿も性格も気性も異なり、互いに結婚するまでは、あったことも話したこともないのに、奇妙なところで意見が一致する。
 姉妹のようだといわれるほどに。
「あら、面白そうなことしてるわね。」
「まぜてまぜて。」
 楽しそうに顔を出したのは、将臣たちの母達。
「これなんか将くんに似合いそう。」
「臣くんはこっちかな。同じ顔なのに、微妙に違うのよネェ。」
「のぞみにこれはおとなっぽいんじゃない?」
「それがいいのよ!下手に可愛いのにしたら、譲子ちゃんと張り合っちゃうでしょ。」
「そうねぇ。」
 再び頷くのぞみ母。つられて頷く譲子母。二人とも何気にひどい(笑)
「あら、こっちのノートは?」
「あ、そっちは女の子向け。一応譲ちゃんと譲子ちゃん。」
「わぁ、可愛い。やっぱり女の子の服は華やかよネェ。」
「ゴージャスなのから、シックなものまで。すごいわね。」
「ふふふ〜。二人とも可愛いから着せがいがあるのよねv」
「これも譲子には、大人っぽい気が…。ゆずちゃんのほうが似合うんじゃない?」
 譲子母が、ホルダーネックのAラインのドレスを指す。飾りがあまりなく、後ろにふんわりとしたリボンがあるだけだ。
「大丈夫よ!譲子ちゃん、スタイルが良いから!このドレスだと胸から腰、ヒップから太もものラインが綺麗にでるの。
譲ちゃんみたいにスレンダーな子は、こっちのほうがいいかな?」
 のぞむ母が指したのは、ぴったりとしたミニワンピースに、腰の部分からたくさんのレース重ね、足元まで覆ったドレス。
「レースの重なり具合と、光の加減で虹色に光るのよ。ふわふわ動いて可愛いわよ♪」
「いいわねぇ…」
「それにしても、すごい量ね。」
 デザインの量に感心して譲母が言えば、のぞむ母がにこりと笑った。
「譲ちゃんも譲子ちゃんも今年16になったでしょ?もうお嫁に来れるとおもったら、つい、力がはいっちゃってv」
「あら、でもあと半年くらいは無理でしょう?のぞみくんも、のぞむくんもまだ17才だもの。」
「そうなのよねぇ。そのせいか男の子の服は、まだ力が入らなくって。」
「…これだけあれば十分な気が…」
「そお?大体一つの作品を作るときは、これくらい試行錯誤するわよ?」
「そうなんだ…。」
「そうそう。ましてやあの子達の晴れ舞台だもの。力も入るわよ!」
 握りこぶしで力説するのぞむ母。
 それを見て苦笑する母たち。
 きゃわきゃわと、少女のようにおしゃべりしていると、ふと思い出したように、譲の母が言った。
「そういえば、クリスマスから譲の雰囲気が変わったみたいなんだけど。」
「あら、そちらも?うちの子もよ。」
 答えたのは、譲子の母。
「少しは進展したのかしら。」
「本当に、さっさとくっついてくれないかしら。」
「事実婚でもしちゃえばいいのに。」
 高校生の子供の親とは思えない発言をする母親たち。



「………さっきから、突っ込みどころが満載なんだが…」
「どこから突っ込んでいいのかわからねぇ…」
 頭を抱える将臣達。
「…おば様…」
「母さんたちまで…」
 赤くなる譲と譲子。
「…事実婚って…」
「いいのかよ。とくに譲ちゃんと譲子のとこ。」
 固まるのぞみに、呆れるのぞむ。



「「「「いいのよ♪」」」」
 いっせいに答える母親達。
「君達の衣装は、全部私に作らせてね♪」
 のぞむ母に優しい笑顔で言われて、全員複雑な心境になるのだった。



written by sou





イラスト sava  文 sava & 総 2007.01.05-06日記
母曰く 母達の思惑 加筆修正