ハッピーハロウィン
「こんにちは。」
「あら、のぞみくん、いいところに。」
母に言われて西の春日家へ使いに着てみれば、珍しくのぞむ母が家に居た。
「お久しぶりです、おばさん。」
「久しぶりね。ほら、こっちにいらっしゃい。いいもの見せたげる♪」
相変わらずハイテンションな叔母に苦笑しつつ傍へ近寄る。
「いいもの、ですか?」
「そう。とっても可愛い黒猫。のぞむが撮ってきてくれたの。」
叔母が見せたのはパソコンのディスプレイ。
「ほら、可愛いでしょう?」
言われるままに画面を覗いて、のぞみは固まった。
可愛い。 確かに、可愛い。 たとえようも無く可愛い。
けれど……
「こ、ここここれっ!」
「うちの商品を提供する代わりに、写真を見せる約束なのよ。
本当はデータも欲しいんだけど、あのこ、独占欲強いでしょ?
見るだけしかダメって。」
のぞみが真っ赤になって上ずった声をあげるが、当の叔母はにこにこと語る。
画面の中には、猫耳とシッポをつけた、譲が映っていた。
「な、なんで譲ちゃんが、こんな格好を!?」
「昨日、ハロウィンだったでしょ?だから。」
「だからっって…」
「猫耳とシッポはオマケだけど、他はうちの秋物よ。
ま、譲ちゃんにはちょっとスカートが短いけどね。」
よくよくみれば、耳と尻尾がなければ、普通の服の組み合わせ。
ロンググローブ、にチューブトップ。ミニのタイトスカートに、オーバーニーソックス。
これにスカーフかストールでもつければ、立派な秋物。
「こっちはスペシャルバージョンよ♪」
クリックの後に出てきたのは…
金色の鈴を真っ赤なリボンで首につけて横たわる、どこかしどけない譲。
「ふふふ〜。エロ可愛いを目指してみましたv譲子ちゃんだと、白でウサギ耳なんていいかもね♪」
叔母の何気ない一言に、譲が譲子に脳内変換されたのぞみ。
ブハッ
真っ赤に染まって、思考停止。
「先輩?どうしたんですか?西町から帰ってきてから変ですよ?」
譲子が不思議そうにのぞみを見る。
話しかけられて、のぞみは譲子を見るが…
すぐに赤くなって顔をそらしてしまった。
しばらくの間、のぞみは譲子の顔を直視できなかったらしい。
「だから、何で俺に言うんだよ!」
「のぞむ兄さんが何かしたんだろっ!」
「俺は何もしてねぇっての。応対したのは母さんだぞ。」
「なんだ、ありゃ。」
「たぶん、原因はこれだな。」
将が不思議そうにするので、臣がデジカメを見せる。
「………なんだ、こりゃ。」
「のぞむのセクハラ。」
「いや、そりゃ分かるが。」
デジカメには、黒猫譲を膝に侍らすのぞむ。
「ハロウィンだったろ。」
「…それでか。」
「のぞみも男だからな。変換しちまったんじゃね。」
「あ〜、そりゃ、のぞみにはきついわな。」
「ちなみにこれが変換後予想。」
デジカメの次の写真には白兎の譲子。
「…………………おいっ。」
「合成。のぞむのおばさんが見たがったんだよ。」
睨む将に、臣が苦笑い。
「…あの人か。」
「勝てねぇだろ。」
「まぁな。あとで、そのデータくれ。」
「白の方だけな。」
eat in or take out ?
可愛いウサギに綺麗な黒猫
食べちゃおうか 持ち帰ろうか
食べた後に 持ち帰ろうよ
「あ、KASUGAの新作」
デパートの一角にあるブティックに、譲子が目を向けた。
秋物にしては丈が短い上下のセットだが、生地はしっかりしていて、
共布のロンググローブとオーバーニーソックスも温かい。
大振りのスカーフを、肩にかけたり、腰に巻いたりと、あれこれ組み合わせるタイプらしい。
色の主流は白と黒らしく、白はモヘア、黒はベルベットの光沢。
「…?なんで、ここにウサギ耳なんかあるんだ?」
パーティーグッズじゃあるまいし…
譲子が首を傾げる。
黒のほうには猫耳。隣の細長いものをよくよくみれば、ベルト(にもなるのだが)ではなく、猫の尻尾。
では、この白の丸いものはブローチではなくて…
「……いつから、色物になったんだ…?」
店員が言うには、ディスプレイ用のジョーク品、とのことだったが、譲子は秘かにため息をついた。
「のぞみ、これやるわ。」
「〜〜〜〜〜〜〜っ!!」
臣からもらったデータをさらに加工してハガキにしてやれば、のぞみが真っ赤な顔で固まる。
やっぱ、この前のあれはこれのせいか。
「将臣くん!!」
「いらないのか?」
ん?と顔を覗けば、真っ赤な顔のまま、一言。
「…いる…」
「プッ」
「将臣くん!」
「わりぃ、お前も男だよな。」
くつくつと笑う将を、のぞみが赤い顔のまま睨んだ。
手にはしっかりとハガキをもって。
そしてのぞみはまるでエロ本を手にした中学生のように、ハガキをどこにしまおうかと悩むのであった。
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文 sava & 総 2006.11.01-02日記文
黒譲、白譲子 eat in or take out ? 加筆修正