昏い夜
「ねぇ、のぞむ。」
「あ?」
母親に声をかけられ、のぞむが不思議そうに見た。
「あんたは、もうちょっと狼になったほうがいいかもね。」
「あぁ!?」
そんなこというやつは初めてだ。
いつもながら突拍子も無い母に、のぞむが眼を見開く。
「それくらい、積極的になれっていってんの。
あんたがやってることは全部、恋人の真似事、でしょ。」
母の呆れたような視線。
「食べたことなんかないくせに。」
「…お母様、その発言は母として問題があるかと存じますが。」
思わず敬語になるのぞむ。
「あら、私なら、学生結婚でも気にしないから大丈夫よ♪」
「…それは…。」
「ゆずちゃんのご両親とも提携結んでるしね〜。」
提携って何だよ!
のぞむが心のなかで突っ込む。
「真似事は真似事でしかないのよ。
だから譲ちゃんが不安になるの。わかっているんでしょう?」
母の言葉に黙り込むのぞむ。
「ま、あんたはよくも悪くもしっかりしすぎちゃったからね。」
苦笑しながら、のぞむの頭をぽん、とたたく母。
「少しくらい、馬鹿になってもいいのよ。」
そのほうが、楽しいわよv
その言葉に、のぞむは苦笑いをした。
勢いでいってしまいたいときは、それこそ山のようにある。
何しろ、譲はとてつもなく無防備なのだ。
けれど、その先を考えてしまう。
傷つけないか、泣かせないか。
嫌われないか。
俺についていけないと、ともにいけないと、離れていった女たち。
それを後悔したことなどないけれど。
譲が彼女達のように離れてしまうのは耐えられない。
誰が離れても、去って行こうとも 譲がいる
譲がいればいい
自分を信頼して、安心して腕の中にいる譲。
昔よりも柔らかで丸みを帯びた体。
はにかむような笑顔が、少女を女性に変える。
終わりのときは、近づいているんだろう。
けれど…
壊したく、ないんだ。
今はまだ、このままで…
のぞむは静かに眼を閉じた。
「君だけ…だから。」
隣にいて欲しいと思うのは。
written by sou
イラスト sava 文 総 2006.11.16日記
暗い夜 加筆修正