リフレインが叫んでる



2人で帰る帰り道。
いつもと同じ町並みをいつもと同じ人と歩く。違うのは繋がれた・・・手。
眼鏡を外したままの私を、危ないから、と言って先輩が手をひいてくれる。
家までの距離が近すぎて遠すぎて、何を話したらいいのかわからない。

「「あっ、あのっ」」

話しかけようとした言葉がかぶってしまってまた黙り込む。
心臓の音が手を通じて先輩に伝わってしまいそう・・・

「・・・譲子ちゃん」
「はっ、はいっ!」

思わず声が裏返ってしまった。
先輩がクスッと笑う。つられて私も笑ってしまう。

「な、何だか慣れませんね、こういうのは・・・」
「・・・嫌?」
「じゃありませんっ!」

ぶんっと音がするほど首を振ってしまった・・・だ、駄目だ。私、正直すぎる・・・
「目、どれくらい悪いんだっけ?」
先輩は気づいているのかいないのか、何事もなかったように会話を続けてくれた。よかった・・・

「ええと、裸眼だと0.6ですね」
「そっか。ボク目だけはいいからなぁ。どういう感じか想像がつかないな」
「・・・そうですね、先輩の顔がちょっと見えにくい、くらい、かと・・・」

しまった。まともに目が合ってしまった。

時間が止まる。

目を逸らすことも、言葉を紡ぐことも、何一つできない。
見えるのは先輩の強い目だけ。

先輩の顔がそっと近づいて、来る。
思わずぎゅ、と繋いだ手に力が入ってしまう。
ばくばくと心臓の音だけが耳に響く。
どうしよう・・・逃げ出したい・


「・・・このくらい?」

キスできる距離まで近づいて、ぴたりと先輩の動きが止まる。

「え?」
「このくらいまで近づいたらボクの顔が見えるのかなって思って」

ぷしゅぅううううう(譲子の緊張が抜ける音)

のぞみは特技「生殺しlv.1」を習得した!

「せ、せ、先輩ぃっ!か、からかわないで、下さいっ!」
「そう?」
「も、もう、び、びっくりしました、てっきり私・・・」
「てっきり?」
「〜〜〜!知りませんっ!」
「あはは。譲子ちゃん、顔真っ赤」
「夕日のせいですっ!」
「そう?」
「そうですっ!」

もうもうもうもうっ先輩ったらっ!人の反応で遊んでる!

「怒らないで。ごめん」
「・・・いいですよ、もう」

ふふっ、クスッ、とどちらからともなく微笑む。

「そういえば今日は何でのぞむ君の家にいたの?」
「家のお使いで、届け物があって」
「で、捕まっちゃったんだね」
「そうなんです。おばさんたらいつも・・・」

いつも通りの、幼馴染どうしの他愛ない雰囲気に戻る。

『…こわいんだよ』『俺も、譲ちゃんも』
『この先に進むことで、変わることを…終わることを、恐れているんだ』

のぞむ兄さんの言葉が蘇る。
あの時は何も分からなくてのぞむ兄さんを怒ったけど、今なら、分かる。

近づきたい。
逃げ出したい。

壊したくない。
壊してしまいたい。

「じゃあ、ね。譲子ちゃん」
「はい・・・おやすみなさい」

家に戻って、からかう兄さんを振り切って部屋に入って着替える。
借りた服をハンガーに吊るして壁に掛けて眺める。

『まともに目をあわせられないくらい可愛い。すごく可愛い。世界で一番可愛い。ありえないくらい可愛い』
『離したくない』

先輩の声が耳元でこだまする。
手にはまだ先輩の温もりが残ってる。
近づいた顔。息遣い。

頭の中で繰り返している。
何度も。何度も。

「・・・先輩の、莫迦・・・」

リフレインで眠れそうに、ない。





written by sava



イラスト sava  文 sava & 総 2006.11.16日記
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