終わりのないリフレイン



譲の手をひいて、数メートルの道のりを歩く臣。
兄の行動は、どこかのぞむと似ている。

『男ってね、好きな子には触りたいものだよ。』

(でもね、私は妹なんだよ。のぞみくん。)
譲は心の中で呟いた。

付き合った相手とさえ、べたべたとくっつくのを嫌がった、臣とのぞむ。
なぜ、自分だけは許すのかと問われて答えた言葉が

かわいいかわいい妹だ。甘やかしてなにが悪い?

妹は、可愛がるもの、守るもの。
そして付き合う相手には、対等を求め、依存をゆるさなかった二人。
それを心地よいとした女は何人もいたが、最後にはあまりの厳しさに自ら手を離す。
それを、臣ものぞむもあっさりと切り捨てるのが常だった。
けっしてこんな風に、やさしく手をひいたりはしなかった。

恋人として、付き合った相手には。


「兄さん、手。」
「あ?」
「もう、家なんだから、いいだろう?」
いまだに手をつないでいる臣に、譲が言う。
「あ、わりぃ。」
ぱっと手を離して、臣が苦笑した。
「そういや、さっき譲子とのぞみが歩いてくの見たけど。手をつないで」
「ああ、叔母さんに飾られてた。」
「…だからか。」
その一言で…以下略
「譲子は可愛いから。」
苦笑気味に言う譲。

…相変わらず、自分は可愛くないとでもいうつもりか…

臣は深いため息をついた。
どうしてこいつは…
いや、理由なんて分かっている。
こいつは、自分の外見に自覚がなくて、そして内面を自覚しているからだ。

けっして、のぞむが欲しがっている「妹」は持ちえないはずの、その感情を。
恋することにより生まれた、ひどく醜い感情。
けれどそれは、「女」としては当たり前のもので。

むしろ「男」としちゃ、嬉しい限りなんだろうに、な。

臣が先ほどとは違い、呆れたようなため息をついた。

先ほど握った手のひら。
小さくて、けれど大きくなったその手。
もう、離さなくちゃいけないのはわかっているんだが…
あいつがへたれてるのが悪い。

臣は心の中で呟くと、譲を見て笑った。
「…ま、いいじゃねぇか。
あいつが一番可愛いっていうのは、お前なんだから。」
「…兄さん…」
「それが、どんな形でも、だ。」
そう言って、臣が譲の頭をなでる。
「…うん、そうだね。」
譲も小さく笑った。
臣にあいさつをして、譲は部屋に入って着替え、クッションにうずもれた。



ゆずるちゃんがいちばんだよ。
だっていもうとなんだもん。

いちばんかわいいおんなのこだよ。


10年以上前の言葉が、未だに心に木霊するのは、
私が変わらないからなのか。
変わりたくないからなのか…。

妹でいたくない。
けれど、妹でいるかぎり、貴方が離れることは無い。

貴方が付き合ってきた女性達のように
その心から存在を消されることはないのだから。

別れた相手のことを、切り捨ててしまった相手のことを
すれ違っても、睨まれても、気付かないくらい
綺麗に忘れてしまう貴方。

それならば妹のまま、貴方の隣にいたい…

あなたに忘れられるのが 何よりも怖い

そのためならば、いくらでも、可愛い妹の振りをするだろう
それであなたと離れずにすむのならば

そして、あなたが触れてくれるというのならば…


「…先輩の、馬鹿…」

終わらせたくて、終わらせたくなくて
眠りの内まで聞こえてくる 終わりのないリフレイン





written by sou



イラスト sava  文 sava & 総 2006.11.16日記
リフレインが喚いてる 加筆修正