兄と妹と恋心
「そういや。」
「ん?」
「お前は年下派だったな。」
将がいうので臣がああ、と頷いた。
「そういうわけでも無いんだが…。まあ、俺の理想は譲だからな。どうしても似たタイプを選んじまう。」
年下のしっかり者。キレカワ系。
臣が付き合った相手はそういうタイプばかりだった。
「その辺、のぞむはバラエティに富んでいたな。年上が多かったが、タイプはばらばらだったし。」
「そう思うか?」
言われて将が不思議そうにした。
「そうだろ?まぁ、ああいう付き合い方だったから、しっかりした自立タイプが基本だったが。」
「そうじゃねぇよ。」
臣はため息をついた。
「あいつは、譲と違うタイプをそれぞれ試していたんだよ。本人自覚してなかったみたいだが、な。」
臣の言葉に、将がえ、と眼を丸くした。
「試した?」
「だからいったろ。無駄にあがいてたって。」
臣が苦笑した。
「選ぶのは、譲と違う肉体派美女ばかり。『妹』ではない女を選んでたんだよ。
だから、長続きしなかった。自分の好みの相手じゃないんだ。続くわけがない。
ただ、のぞむが別れを告げる前に、相手の女が切れちまうことが多かったから、誰も気付かなかったがな。」
臣の言葉に、将が黙り込む。
「付き合えば付き合うほど、自分ではなく譲を見ているのに、気付いちまうんだろう…。
女は、そういうことには敏感だからな。おかげで、譲が苦労した。」
「…そういや、よくあたられてたっけ。」
将が呟いた後、じっと臣をみる。
「なんだよ。」
「…いや、よくお前が何もしなかったな、と。」
「あ?」
「譲が当たられてたのに。」
「ああ…。俺がでてったら、意味ねぇからな。てか、あそこであたるような女は譲の敵じゃねぇし。
むしろ、あたらない女のほうが、ヤバイ。」
「は?」
その言葉に、将が怪訝そうに臣を見る。
「裏で、何してっかわかんねぇからな。ま、その手のは警戒&撃退しておいたが。」
「それは…」
「つっても、そういうのは一人か二人だったぜ。あいつはなんだかんだいって、女の趣味は良かったから。
のぞむなり、譲なりに一度怒って当たってそれで終わりって女がほとんどだった。」
ふーん、と呟くと、将は臣に言った。
「お前は、平気なのか?譲が、そういう扱いを受けていて。」
誰に、といわずに将が問えば、臣が再び苦笑した。
「そりゃ、仕方ないさ。そういう扱いを受けるような真似をしてるのは、譲だからな。」
「は?」
「あいつに望まれるようにしか振舞わなかった譲も悪い。
結局さ、この関係を壊してまで、相手を望めなかったんだよ。あの二人は。」
そう言って笑う顔は、まぎれもなく『兄』のもので。
「のぞむは、ああ見えてボケてんだよ。そういう意味では、のぞみのほうが聡い。」
くつりと、臣が笑う。将は微妙な顔でそれを見ていた。
「…お前はさ。」
「ん?」
「譲子に惚れたりしないんだな。」
好みのタイプ、なんだろ?
将が言えば、臣が心底呆れていった。
「俺の好みは譲系。譲子はまったく違うだろうが。だいいち、あつは妹だ。」
バンッと臣が将をたたく。
「たく、しっかりしろよ。色ボケてんのはあいつらだけで十分だぜ。
譲子と譲のどこが似てるんだよ。…ああ、ボケてるところは、似てるか。」
臣の言葉に、将が苦笑いした。
「そう…だな。タイプはまるで違うよな。」
けれど、その表情が、思考が、心のあり方が、よく似ているのだ。
まるで鏡に映したように。
「まぁ、好みのタイプと好きになるのとは、別だからな。実際、俺も長続きしてねぇし。」
臣が肩をすくめる。
「お前も大変だな。」
「まあな、けど…」
にやりと笑って臣が将を見ていった。
「兄ってのも、存外いいものだろ?公然と弟妹で遊べるんだから。」
その言葉に、将が笑い出した。
「ったく、のぞむで遊ぶのなんざ、お前くらいだ。」
「おまえだって、同じだろ。」
「俺は、見守ってるだけ。」
「よくいうぜ。」
二人の兄たちはくすくすと笑いあった。
written by sou
文 総 2006.11.19日記
兄 加筆修正