彼と彼女と彼の朝
のぞみは寝起き激悪。
「先輩っ起きてくださいっ!先輩ってば!」
譲子がのぞみを叩き起こしています。
どうやら将臣宅にお泊りした次の日のようです。
「・・・ねむい・・・」
「駄目です。今日学校ですっ、遅刻しますよ!」
「・・・うう、うーん、譲子ちゃんがキスしてくれたら起きる〜」
「はいはい、起きてちゃんとできたらキスでもなんでもしてあげます!だから起きて下さい!!」
ぬぼ〜っとした起きぬけ状態ののぞみを支えて譲子がリビングへとやってきた。
にこにこにこにこ
「いや〜相変わらず仲がいいな、あの2人」
「・・・親父、何にやついてんだよ。普通の父親なら娘のああいう姿見て怒るんじゃねぇのか?」
とっくに起きて朝食のパンをぱくついてた将臣が呆れて言う。
「ふふん若造め。お前にはまだ父親のこの心理はわからんか」
「おいおい、この年で子供がいたら犯罪だろ」
将臣のツッコミをさらりと無視して将父は叫んだ。
「譲子は可愛い!できれば嫁には出したくない!かといって可愛い娘をオールドミスにはしたくない!」
「朝から騒ぐなって、血圧あがるぜ。でも読めたぜ親父そういうことかよ」
娘をいつか嫁に出さなければいけないのなら、できれば自分の近くがいい。
その点望なら隣の家で長男で一人息子。引っ越す心配は皆無。
おまけに望の母は自分の妹ときたもんだ。これ以上望むべくも無い好条件だ。
「でも、あの2人まだ何もないぜ」
「え!?・・・あれで、か?」
将父が絶句する。無理も無い、と将臣はため息をついて2人の声がする洗面所の方へと目をやる。
起ききってない望がぼたぼたと雫を盛大にこぼしながら顔を洗っている。
その隣で譲子が背のびしながらせっせとかいがいしく望の顔をタオルで拭いてやっている。
「あの、どう見ても新婚夫婦にしか見えない状態で、か?」
「あの、どう見ても幸せいっぱいバカップル状態で、だ」
将父が頭を抱えるのを横目で見ながら将臣は目玉焼きを口の中に放り込む。
ふぅ〜とため息をつきながら将父が将臣に言った。
「・・・うん、まぁ、嫁に出すにはまだ早いよな」
「ああ」
「一生この家にいるっていうのもありか」
「それはさすがにまずいだろ」
「・・・そういう意味じゃないさ」
怪訝そうな顔の将臣に将父はふっと微笑む。そしてぽんぽんと息子の頭を軽く叩いた。
「父親ってのは子供の幸せを願うもんだ。・・・俺はお前の事も応援してるからな」
「・・・何の事だか分からねぇけど、サンキュ、と言っとくか」
「おう。言ってくれ。わが愛する息子よ」
「げ、気色悪ぃ」
「きゃー先輩っ!抱きつかないで!着替えの途中で寝ちゃ駄目です!起きて!」
「・・・おきてる、よ〜」
「それ起きてるって言いませんから!とりあえず服着て下さい!先輩っ」
目の前では相変わらず譲子とのぞみの仲の良い光景が繰り広げられている。
「お前も色々大変だな・・・」
「・・・まぁ、な」
将臣は残っていたコーヒーを飲み干した。
朝のコーヒーは少し濃くて口の中に苦味が残った。
written by sava
ようやく目を覚ましたらしいのぞみが挨拶をする。
「おはようございます、おじさん、おばさん。」
「おはよう、のぞみくん。」
「譲子にキスしてもらったかい?」
「は?」
有川夫妻の言葉に、のぞみが目を丸くした。
「起きてちゃんとできたら、キスしてもらうんだろう?」
「父さん!母さん!」
ほほほほほ、と楽しそうに笑う有川夫妻。
「のぞみにそんな甲斐性ねぇって。あったら今頃孫がうまれてっぞ。」
将臣がけらけらと笑えば、夫妻はにこやかにいった。
「あらぁ、それも良いわねぇ。」
「のぞみくんの子供なら、可愛いだろうねぇ。」
「えええっ!?」
のぞみは自分の発言など綺麗さっぱりわすれていて、赤くなったり青くなったりしていた。
後日
お気に入りのカフェで、譲子が譲にぼやいた。
「もう、先輩ったら、寝ぼけると妙に甘えるんだよ。キスしたら起きるなんて言って。」
そういってもらえるのは嬉しいけれど、その後決まって両親と兄がからかうのだ。
つい、愚痴れば、譲が不思議そうにこちらを見ていた。
「…?それって甘えてるからなの?」
「え?」
手を口元にあてて、譲が思い出すように言った。
「先輩、起こすときはキスをするものだっていってたよ。…よく、起こしにきてくれるんだけど…」
「…望兄さんが起こすの?」
意外にも、のぞむは早起きなのか。
なまじのぞみの寝起きをしっているだけに、譲子は不思議そうに訊く。
「ん。でもやっぱり眠いみたいで、よく隣で寝ちゃってるんだ。だから、結局私がキスして起こすことになるんだけど。」
可愛いよね、と頬をそめる譲。
「でも兄さんには絶対やっちゃだめだっていうんだ。のぞみくんがそう言ってるんなら、春日家のしきたりなのかな?」
「………………」
そんなわけがないだろう。譲子は心の中で突っ込んだ。
(望兄さん、これ以上譲に変な常識を教えるな!)
ここには居ないセクハラ大魔王と、その魔王の言葉ならなんでも信じてしまう純真無垢な子羊に、めまいを覚える譲子であった。
written by sou
イラスト sava 文 sava&総
2006.09.24〜25「彼と彼女の朝」「morning kiss将編」加筆訂正
2006.09.24日記「morning kiss」加筆修正